フェラーリのセバスチャン・ベッテルが、母国ドイツでのF1人気が低迷し続けている状況は「謎」だと語った。
ベッテルがそう語ったのは、先週末に23年ぶりに開催されたF1メキシコGP決勝後のことだ。収容人員数を超える13万4,000人もの熱狂的な観客で埋め尽くされたサーキットだが、スタジアムセクションに設けられた表彰台で行われた表彰式はかつてないほど壮観なイベントとなっていた。
かつて3度F1チャンピオンとなった伝説的元F1ドライバーであり、現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダも、「運営とファンに関しては、これまでに見たレースの中でも最高だった」と称賛を送っていた。
ドイツの『Welt(ヴェルト)』紙は、メキシコGPの主催者が、もしサーキットの観客収容能力がもっと高ければ、30万枚のチケットを売ることだってできていただろうと語ったと報じている。
そして、メキシコGPの舞台となるエルマノス・ロドリゲス・サーキットでは、2016年にはさらに観客席の増設が行われることはほぼ間違いないと見られている。
こうした状況は、伝統あるドイツGPとはまったく逆の傾向を示していると言える。ニュルブルクリンクが経営破たんに陥り、高額なF1開催権料負担ができなくなったことで今年のドイツGPがキャンセルされてしまったが、ドイツでのF1レースでの入場者数が毎年減ってきているのは事実だ。
近年はニュルブルクリンクとホッケンハイムで交互開催されてきたドイツGPだが、来年はホッケンハイムで開催される予定となっている。だが、ホッケンハイムのレース主催者も、なんとか収益をプラスマイナスゼロのところにまでもっていくために苦戦を強いられている状況だという。
こうしたドイツの状況について『Bild(ビルト)』から質問を受けたドイツ人ドライバーのベッテルは、次のように答えた。
「多分、ファンは少し疲れてしまったのか、あるいはチケットが高すぎるのかもしれないね」
「正直に言って、何が悪いのかよく分からないんだ。謎だよ」
だが、チケットが高額だという説は、正解ではないようだ。メキシコは貧困率が46%にもおよぶことで知られているが、メキシコGPのチケットはドイツでの価格に比べてもほんのわずかに安いだけだったという。
「メキシコでは、ドイツでよりもっと多くのドイツ国旗が振られていたと思う」
そう続けたベッテルは、次のように続けた。
「かつてはドイツでのレースは素晴らしかった。だけど、ここ数年はそうでもなかったよ」
「レースを見に来るドイツ人がどんどん減っていくのを見るのは残念だよ。ドイツ人ドライバーたちが勝利を目指して戦っているというのにね。これ以上のことは望めないはずなのに」
1994年から今年までの22年間には、ミハエル・シューマッハが7回、ベッテルが4回と合計11回ドイツ人ドライバーがF1タイトルを獲得している。この期間だけを見れば、F1タイトル獲得率5割を誇ってきたF1王国であるはずのドイツ。しかも、最近2年間はドイツが誇る自動車メーカーのメルセデスがコンストラクターズタイトルも獲得している。
あまりに強すぎたことで逆にファンの興味が薄れ、人気にかげりが見え始めたということだろうか?
「ほかの国々では、みんながまだこのスポーツに情熱を持っていることが分かるよ」とベッテルは付け加えた。