F1からの撤退をほのめかしているレッドブルだが、そのライバルたちや、F1最高責任者であるバーニー・エクレストンさえ、2010年から2013年まで4年連続でF1チャンピオンチームとなったトップチームが現在置かれている状況に対しては同情を感じていないようだ。
レッドブルは、これまでエンジンパートナーを務めてきたルノーとは本来2016年までの契約を結んでいた。それを早期に解消することを決めたレッドブルだが、メルセデスやフェラーリではレッドブルへ最新スペックのパワーユニットを供給することを拒んでおり、このままではレッドブルとそのジュニアチームであるトロロッソの2チームがF1から撤退を余儀なくされると主張している。
■レッドブルに契約履行を求めるエクレストン
だが、レッドブルはエクレストンとの間に少なくとも2020年まではF1参戦を続けるという契約を結んでおり、これによって収益金分配に上乗せを勝ち取り、F1の意思決定組織であるストラテジー・グループにも議席を得ていた。
そして、エクレストンは、もしもレッドブルが本当にその契約を破ってF1から撤退するようであれば、彼らに対して訴訟を起こすことも考えざるを得ないと主張している。
「レッドブルは法廷に立ち、『はい、我々は契約を交わしています。しかし、我々にはエンジンがありません』と証言することになるだろうね」
『Independent(インデペンデント)』紙にそう語った10月28日に85歳の誕生日を迎えるエクレストンは、さらに次のように続けた。
「私の主張は、契約にサインをしたのだから、それを履行すべきだし、契約にサインをするときにエンジンが必ず手に入ることを明確にしておくべきだった、というものになるだろうね」
確かに、レッドブルとルノーの決別を早めることとなった原因が、ルノーエンジンのパフォーマンス不足にあるのは間違いないだろう。だが、レッドブルが延々とルノーに対する批判を続けてきたことが、両者の和解の道を閉ざすことにつながったのも事実だ。
■レッドブルのやり方を批判するライバルチームたち
ライバルチームもレッドブルの現在の状況には冷ややかな視線を向けている。
かつて世界的エナジー飲料メーカーであるレッドブルは、1995年から2004年までザウバーのタイトルスポンサーを務めていた。現在ザウバーのチーム代表を務めるモニシャ・カルテンボーンは、イギリスのテレビ局『Sky(スカイ)』に次のように語った。
「彼らとの間には長い歴史があります。我々が彼らをF1に導いたわけですし、10年にわたって協力関係にありました」
「しかし、最近の数年に目を転ずれば、彼らはほかのチームとの合意もないまま、多くのものを持ち逃げしていました」
「彼らはずいぶん変わってしまいました。恐らく、成功したことが彼らを大きく変えてしまったのでしょう。しかし、コミュニケーションはそれほどとられていませんでした」
そう述べたF1唯一の女性チーム代表であるカルテンボーンは、次のように付け加えた。
「現在の問題に対する答えは、彼らは今手に入れられるものでなんとかするしかないということです。我々は何年もの間そうやってきました。なぜ彼らが今同じことをできないのでしょう?」
ウィリアムズの技術責任者であるパット・シモンズも、「まったく同感だね」と語り、次のように続けた。
「彼らにとっては困難な状況だろうし、これまでと同じようにはそれに対処することができていないようだ。そして、今の状況は、多くのファンから反感を買っているに違いないよ」
「父が私によく言っていたことを思い出すよ。『負けているときには何も言うな。勝っているときには、さらに口を固く閉じよ』とね。恐らくは、我々が実践すべきモットーはそれなんじゃないかと思うよ」とシモンズは結んでいる。