ロータスが来季もF1の世界に残っていられるかどうか、まだ完全にははっきりとしない状態が続いている。
■まだ一筋縄ではいかないルノーのロータス買収
ロータスのチーム副代表を務めるフェデリコ・ガスタルディは、すでにルノーとロータスがチーム譲渡に向けての「基本合意書」を取り交わしてはいるものの、実際にルノーによるロータス買収契約が正式に結ばれるのは12月になってからだろう語ったと伝えられている。
かつてチームオーナーとしてジョーダン・グランプリを率いていたエディ・ジョーダンは、次のように発言している。
「私は、常々F1で交わされる“基本合意”というものはあまり信用していないんだ。なぜなら、それ自体には何の価値もないからさ。それが書かれた紙ほどの価値もね」
ルノーやフランスの石油会社トタルとの関係も深かったロマン・グロージャンが、ルノーの新ワークスチーム誕生を待つことなく、来季F1に新たに参戦を開始するハースF1への移籍を決めたのもそういう背景があってのことだろう。
ともあれ、財政難を抱えるロータスとしては、ルノーによる買収契約が正式に成立するまで、つめに火をともすようなつつましやかな暮らしをしながら待つしかないのが現実だ。
先週末のF1ロシアGP決勝でクラッシュしてクルマを大破させてしまったグロージャンは、2週間後にテキサス州オースティンで開催されるアメリカGP(25日決勝)までにクルマを修理するためのパーツがそろえられることを祈っていると語っていたが、それは冗談でもなんでもないようだ。
■グロージャンの後任は?
そのグロージャンに代わって来季パストール・マルドナードのチームメートになるのではないかと言われているのが、イギリス人ドライバーのジョリオン・パーマーだ。パーマーは今季ロータスと控えドライバー契約を結び、各レースの金曜フリー走行1回目にはグロージャンに代わって走行を担当することが定番のようになっている。
だが、そのパーマーもこの先のことについては不安で仕方がないようだ。
「もちろん、そう(ロータスのシートを確保)したいさ。だけどできないんだ。僕がそうしたいと思っていることは誰もが知っていることだけどね」
そう『BBC』に語ったパーマーは、次のように続けた。
「もし、それ(ルノーによる買収)が実現しなかったら、現在のオーナーが大きな負担を抱えてしまうことになるだろうし、彼らは来年に向けては何か違う手段を講じようとするんじゃないかな」
とはいえ、もしもルノーとロータスの買収プロジェクトがうまく推移したとしても、パーマーの身分は決して安泰とは言えないだろう。ほかにも多くのドライバーが、グロージャンが抜けたあとのシートを狙っているからだ。
例えば、現在マクラーレンの控えドライバーを務めているケビン・マグヌッセン、同じくマクラーレンのテストドライバーであり、今季のGP2チャンピオンとなったストッフェル・ファンドールネ、そしてフェラーリの開発ドライバーを務めながらフォーミュラEに参戦しているジャン-エリック・ベルニュなどの名前があげられている。
■ルノーの買収契約成立は12月までずれこむ公算
だが、ルノーとロータスの状況は思った以上に複雑なようだ。
ガスタルディは、デンマークのタブロイド紙である『BT』に次のように語った。
「もはや、我々だけで決定するわけにはいかないんだ」
「チームの買収には長いプロセスが必要だし、それは恐らく12月までかかるだろう」
「それ以前には何かの決定がなされることはないと考えている。ルノーの首脳部が突然ほかの判断をするようなことがあれば別だがね」
■ドライバーの決定はルノー次第
そのロータスには、現時点では来季のドライバーのことを考える余裕もないというのが実情のようだ。
「我々はロマンがチームを去ることを決めたことにショックを受けたよ。彼はうちのドライバーとして最適な人物だったからね」
「彼には経験もあり、我々とともに年々も過ごしてきていた。それに彼はフランス人だ。だから、彼がハースへ行くという決断をしたことには驚かされた」
「我々は、新しいドライバーを探す必要が生じるとなど考えていなかったし、正直に言って、現時点では候補者のリストさえ作っていないよ」
ルノーがエンストンに本部を構えるロータスを買い戻して、新生ルノーF1が誕生することになれば、フランス人のベルニュなどは格好の候補者となりそうだ。だが、ガスタルディは次のように続けた。
「私の個人的意見だが、国籍はそれほど大きな問題ではないよ」
「だが、そういうことは新たなオーナーが評価を行うことになるものだ」
そのルノーで現在F1プロジェクトリーダーを務めるシリル・アビテブールは、次のようなコメントを行っている。
「現時点では、ロータスとの合意を成立させることに集中しているところだ」