F1ロシアGP(11日決勝)が開幕した9日(金)、ソチ・オートドロームのパドックにおける最大の話題はレッドブルのエンジン問題に関することだった。だが、その状況は意外な進展を見せていると報じられている。
まずうわさに上っていのは、フェラーリではレッドブルのジュニアチームであるトロロッソに対しては2016年に2015年型エンジンを供給すると申し出たものの、直接的なライバルとなるレッドブルに対してはエンジンの供給を行わないことを決めたようだというものだった。
■トロロッソはフェラーリ? 残されたレッドブルは?
トロロッソのチーム代表であるフランツ・トストは、ロシアの『Championat(カンピオナ)』に対し、「あまりにも遅くなりすぎたことは分かっている。だから、2016年にフェラーリの2015年仕様エンジンを使うということは、我々にとっては許容できるものだ」と語り、フェラーリの申し出を受ける方向で進んでいることをほのめかした。
それが事実であれば、レッドブルだけが来季エンジンを入手できずに取り残されることになる。そうなればレッドブル総帥であるディートリッヒ・マテシッツはミルトンキーンズに本部を構えるレッドブル・レーシングの運営から手を引くことになるのは間違いないと考えられている。
そして、そうなった場合には、現在ロータスの買収に向けた準備を進めているルノーが、方向性を変えて現レッドブルの買収に動くのではないかといううわさまでささやかれている。
■精力的に調整に走ったエクレストン
ともあれ、今週末のソチでは、ここまでにさまざまな話し合いが持たれていることは確かなようだ。その中心人物がF1最高責任者であるバーニー・エクレストンだ。エクレストンは9日(金)にレッドブルの首脳陣と長時間の会合を持ったほか、その後メルセデスAMGの非常勤会長であるニキ・ラウダとも話し合いを行ったという。そして、前日の8日(木)にはフェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネとも会っていたようだと伝えられている。
だが、エクレストンは『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』に次のように語り、レッドブルのエンジン問題に関する橋渡しがうまく進んでいないことをほのめかしていた。
「レッドブルとフェラーリはどちらもF1タイトルを取りたいと望んでいる。だからフェラーリとしてはレッドブルに手を貸さないほうが自分たちの利益になるわけだ」
そして、それはメルセデスも同じだ。メルセデスのモータースポーツ責任者であり、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターを兼務するトト・ヴォルフは、明確にレッドブルへのエンジン供給の可能性を否定している。
「私も、みんながお互いに話をするようにアレンジすることはできても、力ずくで彼らに何かをやらせることはできないからね」とエクレストンは付け加えた。
■一転してレッドブルとルノー再結合のうわさ
ところが、ロシアGPの金曜日のセッションが進むにつれ、雨でぬれたソチ・オートドロームを走行するF1カーよりも速いスピードでさらに新たなうわさが飛び交い始めた。
ロシアGPフリー走行2回目が行われている間に、レッドブルとルノーが再び交渉を始めたようだとのうわさが渦巻き始めたのだ。
エクレストンは上機嫌でメディアに対して次のように語ったと伝えられている。
「すべて解決の方向に向かっているし、私はそれに関して心配はしていないよ。今はもう問題はなくなったと思っている。彼ら(レッドブル)がどのエンジンを手にするにせよ、問題は片付いたんだ」
「もちろん、彼らがエンジンを手に入れられれば、それは前向きなことだ」
■レッドブルのエンジン問題が片付くのは確かだとエクレストン
それに関する発表はいつ行われることになるのかと質問されたエクレストンは、次のように答えた。
「私には分からないよ。彼らが決めたときに、彼らが発表することになるだろうね」
「彼(マテシッツ)は決して(F1への)愛情を失ったわけではないんだ。彼はただ戦える位置にい続けることを望んでいるだけなんだ。そして、それが実現することになる。彼はそれで問題なしだ」
そう語ったエクレストンは、次のように付け加えた。
「彼は、自分がやっていることを分かっているのさ」
だが、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、エクレストンほど楽観的ではないようだ。ホーナーはイギリスの放送局『BBC』に次のように語った。
「バーニーのすごいところは、我々の誰よりもいろんなことを知っているように思えることだよ。もし彼がすべて解決したと知っているのであれば、すべてめでたしということになるんだろうね」