2016年からF1参戦を開始するアメリカのハースF1だが、チームオーナーのジーン・ハースはアメリカで最も人気の高いポータースポーツであるNASCARにも共同オーナーとしてチームを送り込んでいることでも知られている。
■これまでとは違う手法を取ったハース
ハースは来季からF1にチャレンジするにあたり、フェラーリとイタリアのシャシーメーカーであるダラーラ社との協力関係を結んでいる。こうしたアプローチは、これまでにF1参戦を果たしたチームが取ってきた手法とはかなり異なるものだ。
例えば、2010年からF1参戦を開始したHRTやケータハム、そしてヴァージンとしてスタートした現マノー・マルシャはいずれも独自にシャシーを開発・製造する従来のやり方を取っていた。
しかし、HRTとケータハムはすでにチームが消滅。マルシャも昨年経営破たんに追い込まれたが、今は亡きジュール・ビアンキがモナコGPで9位入賞を果たしたことによる賞金のおかげでなんとか今も生き延びているという状況だ。
■大幅な技術協力実現によりコスト削減
ハースは、イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』誌に対し、来年のチーム予算はおよそ1億ドル(約120億円)であると語っている。この額は、昨年のチャンピオンチームであるメルセデスAMGが計上した欠損と比べてもかなり少ない額だ。
「ある意味では」とハースは続けた。「その額は、(F1では)2台だけしか走らせないにせよ、NASCARへつぎ込んでいる額とほぼ同じようなものだよ」
「最大規模では、(チームスタッフは)およそ200人を抱えることになるだろう。ウィリアムズやフォース・インディアのようなチームのほぼ半分だよ。我々のクルマの製造活動はかなり限定されているからね。少なくとも、ほかのチームとの比較においてだが」
これはもちろん、シャシー製造に関してはかなりの部分にイタリアのダラーラがかかわっているからだ。そして、それ以外のハースF1カーの構成部品については、その多くがフェラーリから供給されることになっている。
「こうしたことによって、我々はかなり身軽に運営できるんだ」とハースは付け加えた。
本来、F1チーム(コンストラクター)として認められるためには、シャシーは原則として自社製造であることがルールで定められている。だが、ハースF1では、あくまでも自分たちが主体であり、ダラーラやフェラーリからは技術協力を受けるだけだという形にすることで、このルールに抵触しないギリギリの線でF1参戦をもくろんでいるわけだ。
■予算総額はNASCARチームとほぼ同じ
ハースは、かつてマルシャが所有していたバンベリーのファクトリーが主たる活動の場となり、それ以外に少人数のグループがアメリカのカナポリスとイタリアのダラーラ社で作業にあたることになると説明。さらに、その予算に関して次のように続けた。
「初年度は、1億ドルから1億1,000万ドル程度の予算を立てている。つまり、F1で2台走らせるのとNASCARで4台走らせるのがほぼ似たような予算なんだ」
「クルマのコストという点に関しては、NASCARは1台あたりおよそ2,000万ドル(約24億円)だが、F1はおよそ3,500万ドル(約42億円)だね」とハースは付け加えた。