現在、2017年以降のF1タイヤサプライヤー選定手続きが進められており、現在のサプライヤーであるピレリと、F1復帰を目指すミシュランの両者が争う形となっている。
【結果】F1ベルギーGP決勝の順位、タイム差、周回数、獲得ポイント
だが、先週末にスパ・フランコルシャンで行われたF1ベルギーGPにおいて2度のタイヤ破裂という事態が起きてしまったことで、ミシュランを推す声のほうが強くなりそうだという見方が出てきている。
■ピレリタイヤの安全性に不信を抱くF1
決勝レースで、あと残り2周というところで表彰台を逃してしまったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が烈火のごとく怒ったのはもちろん、金曜フリー走行中に時速300kmで走行中に同じようなタイヤ破裂を経験していたニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)もピレリに対する不信感をあらわにしている。
ピレリでは、今回のタイヤ破裂に関して、外部から受けた損傷や摩耗が進みすぎた状態で走り続けたことから起こったものだと主張しているが、ロズベルグはレース後に自身のブログの中で、それは「まったく受け入れられない」とコメントしていた。
そのロズベルグは、『Bild(ビルト)』紙のコラムの中で次のように語り、ピレリへプレッシャーをかけている。
「ピレリが、次のモンツァ(イタリアGP/9月6日決勝)の前に、すべてに対して的確に二重チェックを行い、僕たちが安全にレースができるようにしてくれると確信しているよ」
■自分たちだけが損な立場だとピレリ
このロズベルグのコメントは、ピレリのモータースポーツ責任者であるポール・ヘンベリーが、ベルギーGPで自分たちに向けられた非難に対し、怒りをもって次のように反論したことを受けてのものだった。
「エンジニアたちは、タイヤを犠牲にすることで、クルマをこれまでにはなかったほど限界ギリギリで走らせようとしている」
そう『Bild(ビルト)』に語ったヘンベリーは、次のように続けていた。
「ドライバーたちは、最初はタイヤが軟らかすぎると言い、次には硬すぎると言うんだ。我々(ピレリ)だけが常にばかを見ている状態だ」
■ピレリにとってはまずいタイミングで起こった破裂事故
いずれにせよ、先週末に立て続けに起こったタイヤ破裂が、ピレリにとっては悪いタイミングで起こってしまったというのは事実だろう。現在、F1最高責任者のバーニー・エクレストンとの間で2017年以降の契約延長に関する交渉が進められている最中だからだ。
エクレストン自身は、現在のサプライヤーであるピレリを推しているようだと言われている。だが、今回のタイヤ破裂により、ミシュランのほうがふさわしいのではないかとのプレッシャーがかかってくるのは確かだろう。
かつてマクラーレンやレッドブルなどで活躍した元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、「F1には最高のものがふさわしい。そして、現在のタイヤはそうではないね」と厳しいコメント。
■ミシュランにとっては追い風か
シンガポールの『Straits Times(ストレーツ・タイムス)』のデビッド・トレメイン記者も次のように書いている。
「これ以上の批判が起これば、エクレストンは2017年以降のタイヤサプライヤーとしてミシュランを選ぶという結果になるかもしれない」
また、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のベテラン記者ミハエル・シュミットも、「ピレリにとって、その安全性に関する議論が最悪のタイミングで起こってしまった」と書き、次のように付け加えている。
「ピレリとは違い、ミシュランは長持ちするタイヤを提唱している。スパで起こった破裂は、そうした議論の最中にあって、格好の実例となってしまった」