今季のF1エンジンルールでは、ドライバー1人あたり使用できるエンジン数は年間4基までと定められており、それを超えるとグリッド降格のペナルティーを受けることになってしまう。
そして、今季このペナルティーを受けずに済むエンジンメーカーは、メルセデスだけとなりそうだ。
この年間4基という厳しいルールが、今年エンジンサプライヤーとしてF1復帰を果たしたホンダにとっては非常に大きな足かせとなってしまったのは事実だ。信頼性に大きな問題を抱えたホンダでは、多くのエンジンコンポーネントを交換するしかなく、第8戦オーストリアGPではマクラーレンのフェルナンド・アロンソとジェンソン・バトンが合わせて50グリッドもの降格処分対象となる前代未聞の状態となっていた。
こうした状況をかんがみた統括団体FIA(国際自動車連盟)は、今後参入するエンジンメーカーには今後1基多くエンジンを使用することを認めるとともに、ホンダにもそのルールをさかのぼって適用することを決定していた。
■今後もペナルティーは避けられないマクラーレン・ホンダ
これに関し、ホンダF1プロジェクト総責任者である新井康久は、次のように語った。
「今回の決定は、新たにF1に参入するパワーユニットサプライヤーにとっては勇気づけられるものだ」
「それゆえ、私としてはこの決断を支持してくれたすべてのチームとパワーユニットサプライヤーに感謝したいと思う。これはチームにとってもドライバーにとってもよいことだ」
「だが、それはホンダが、信頼性において本来あるべきところにまで至っていないということを意味するものだ」
そう語った新井は、次のように付け加えた。
「残念ながら、今後数か月の間に再びペナルティーを受けることになるだろう。だが、同時に、シャシーとパワーユニットの両面において大きな改善も果たされることになる」
■ルノーもさらなるペナルティーは必至
今季、パワーユニットの信頼性に大きな問題を抱えていたのはルノーも同じだ。
レッドブルとトロロッソのドライバーの中にはすでに今季5基目のエンジンを搭載した者もおり、そのためのペナルティーも受けている。
さらに、ルノーでは第15戦F1ロシアGP(10月11日決勝)には、パフォーマンスを改善した新パワーユニットを投入する予定にしており、これによってさらにペナルティーを受けることになってしまう。
レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、次のように語った。
「改善が施されたユニットを投入する前にペナルティーを受けずにいられるかどうか、そしてうまくソチにたどり着けるかどうかは、時間がたたないと分からないね」
■フェラーリにもペナルティーの可能性
今季、メルセデスAMGにとって最大のライバルとなっているフェラーリ。そのパワーユニットは昨年と比べると格段の進歩を遂げたのは間違いない。だが、そのフェラーリでさえ、パワーユニットを年間4基以内に抑えるのは難しい状況だ。
イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』が報じたところによれば、フェラーリでは計画通りにモンツァ(第12戦イタリアGP/9月6日決勝)に投入することになると報じている。フェラーリはそのパフォーマンス開発のために2枚の「トークン」を使用したと言われている。
だが、モンツァでセバスチャン・ベッテルのクルマに搭載される新たなパワーユニットは、今季4基目のものとなる。だが、フェラーリではまだ5枚のトークンを今季は残しており、それを使ってパフォーマンスを改善した新パワーユニットを投入することになるのは間違いないだろう。もちろん、そうなればペナルティーを受けることになる。
『Autosprint(オートスプリント)』は、フェラーリは10月終盤までにはその5基目のパワーユニットを用意する計画になっているとしている。つまり、アメリカGP(第16戦/10月25日決勝)、もしくはメキシコGP(第17戦/11月1日決勝)にそれが投入されることになりそうだ。
■今季は開発継続を優先するとフェラーリ
フェラーリの最高技術責任者であるジェームス・アリソンは、フェラーリにとっては、今季はペナルティーのことを気にするよりも、開発を進めることのほうが重要だとほのめかしている。
「今季は、ここまでかなりの進歩を遂げられたことに満足できると思う」と『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語るアリソン。
だが、ハンガリーGPでベッテルが今季2勝目をあげたとはいえ、今季のフェラーリがF1タイトルを争えるような位置にいないことはよく分かっている。
「誰もが誇りに思えるようなクルマを造るまで、やるべきことが山のようにあるよ」
そう認めたアリソンは、次のように続けた。
「我々にはまだF1タイトルを争うだけの力はない。だが、我々は現実的だし、どういう状態から始めたのかということを忘れてはいないよ」
■今のエンジンルールは間違っているとF1ボス
F1最高責任者のバーニー・エクレストンは、こうしたエンジン使用基数制限ルールは、今日のF1ルールの中でも大きな疑問を感じるもののひとつだとスペインの『Movistar(モビスター)』に次のように主張した。
「想像してごらんよ。あるドライバーが予選で4番手になったとする。ところが、エンジンやギアボックスを交換していたからといって10グリッドも後ろに下げられてしまうんだ」
「私の意見だが、これは完ぺきに間違っているよ」