今年エンジンサプライヤーとしてF1復帰を果たしたホンダだが、これほどまでに苦戦するとは考えていなかったと認めた。
現在、F1は夏休みを迎えている。だが、マクラーレンにパワーユニットを供給するホンダは現在も休むことなく、必死の取り組みを続けており、夏休み明けのF1第11戦ベルギーGP(23日決勝)にはパフォーマンスの改善を図った新パワーユニットを投入することにしている。
ホンダが今季投入してきたV6ターボによるパワーユニットは、信頼性に大きな問題があるばかりでなく、マクラーレンのレーシングディレクターであるエリック・ブーリエによれば、パフォーマンス的にも120馬力ほど劣っているという。
だが、F1プロジェクト総責任者の新井康久は、残された7枚の「トークン」を使ってパフォーマンスの向上を図る計画であることを明らかにし、次のように語った。
■すでに信頼性の問題は解決できた
「吸排気システムのレイアウトを変えたり、燃焼室の設計を変更したりすることで特性を変えたいと考えている」
だが、ホンダとしては2015年型のパワーユニットの基本設計を変えるつもりはないようだ。
「我々のコンパクトなパワーユニットのレイアウトは今後大きな競争力を示すはずだと信じている」
そう語った新井は、次のように続けた。
「我々のF1復帰にあたっては非常に厳しいスタートになっている」
「だが、ありがたいことに、問題のほとんどはすでに解決されているし、さらに前進させることに集中することができるところにまで来ているよ」
■ここまでの苦戦は想像していなかった
今年、7年ぶりにエンジンサプライヤーとしてF1復帰を果たしたホンダだが、新たな「パワーユニット」への挑戦を過小評価していたのではないかと質問された新井は、次のように答えた。
「このスポーツは、かつてマクラーレン・ホンダが“栄光の日々”を築いたころとは大きく変わっている。現在のテクノロジーは非常に洗練されているし、いいレーシングカーを作ることは難しくなっている」
「簡単ではないだろうとは考えていた。だが、これほどまでに厳しいだろうとは想像していなかったかもしれない」
「私自身も、これほどの技術的困難に直面するとは想像していなかった。だが、我々のパワーユニットが目指そうとした方向性に関しては自信を深めているよ」
「トップチームたちを打ち負かすためには、非常に革新的なものをつくりあげる必要があったんだ。最高のチームを破るということが我々の究極の目標だからね」
■マクラーレンとぶつかり合うのも前向きなこと
そう語った新井だが、今ではマクラーレンの首脳陣からの信頼も失っており、辞職を求める声も強くなっているのではないかとのうわさもある。
新井本人は、こうしたうわさに関して、次のように語った。
「ホンダの開発に関する方法論は、F1やマクラーレンのものとは非常に異なっていると思う」
「私自身は、このプロジェクトを率いていけるのは自分だと思っている。だが、私には自分の将来を決定することはできないし、ましてや、メディアやマクラーレンの取締役メンバーが決めるわけにもいかないことだ」
「彼ら(マクラーレン)がスポンサーたちからプレッシャーを受けていることは分かっている。だが、我々はお互いに信頼し合っているし、助け合っているよ。革新的ないいアイデアを見つけるためにね」
そう述べた新井は、次のように付け加えた。
「時折ぶつかり合うこともあるが、これは両者が100%の力を注いでいることを意味するものだし、このパートナーシップにおいてはお互いが非常に情熱的であるからゆえなんだ。これはネガティブなことではなく、ポジティブなことだよ」