今季のF1第6戦モナコGP開催時に、F1ドライバーによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)がF1改善を目的として世界のファンに向けた意識調査を行っていた。
そして、194か国に及ぶ地域から20万人以上のファンが回答を寄せたと伝えられている。
そうした回答の中には、再び複数のタイヤサプライヤーを参入させることでかつてのようなタイヤ戦争を復活させることや、レース中の再給油の復活などを求める声もあった。だが、これらについてはいずれもF1チーム側が導入を見送ることを決定している。
■F1ファンが本当に求めているものは?
かつてマクラーレンやレッドブルで活躍した元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語っている。
「カメラの前では、チーム代表たちはファンが望んでいることが重要だとコメントする。だけど、僕に言わせれば、それはシェフが客に対して何を食べたいかを聞きながら、結局のところ自分の作りたい料理を作っているようなものだと思えるよ」
「つまり、キミ・ライコネンが一番人気のあるドライバーだという結果が出たことから何を学ぶことができるかってことだよ」
そう語ったクルサードは、次のように付け加えた。
「人々は、個性的なものを欲しているんだ。荒削りなドライバーたちをね。彼らは勝利を目指し、時には敗れ、落ち込み、ミスを犯し、事故を起こし、批判さえ生む。完ぺきなものほど退屈なのさ」
■もっとベテランに目を向けよとビルヌーブ
そのGPDAの調査によれば、ライコネンに次いで人気が高いのが現在マクラーレン・ホンダに所属するジェンソン・バトンとフェルナンド・アロンソだった。
元F1ドライバーであり、1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブはこれについて次のようなコメントを行っている。
「誰なの? 3人とも経験が長い連中じゃないか」
確かに、現役ドライバーにおいてF1出走数ベスト3のドライバーたちが、ファンの人気でもトップ3を占めたことになる。
「これによってよく分かるのは、ドライバーがどんどん若返っているという今の流れとはすごく違っているということだね。チームがそのことを理解できていないことに驚きを感じるよ」
「彼らは自分たちで市場調査をしていないのかな?」とビルヌーブは付け加えた。
■GPDA調査そのものがF1危機を証明との意見
だが、やはり元F1ドライバーであり、1996年のF1チャンピオンであるデーモン・ヒルは、F1ドライバーたちがこうしたファンに対する意識調査を行ったという事実こそ、F1が危機的状況を迎えていることを示すものだと考えている。
「ローリング・ストーンズがそういう調査をしたなんて話を聞いたことがあるかい? 僕は、F1そのものが、自分たちが何をするべきなのかを分かっていると思いたいよ」
「常に人気によって力を得ようとしていたら、同じところを堂々巡りしてしまうんじゃないかな」とヒルは結んでいる。