ニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)の今年度レース活動は、いまが最盛期だ。
F1第7戦カナダGPの決勝を終えると、彼はすぐさま飛行機に飛び乗ってフランスへ向かう。ポルシェに乗って伝統のルマン24時間に出場するのだ。
今どきのF1ドライバーに珍しくヒュルケンベルグは今年、F1とプロトタイプカーを掛け持ちしている。ただし彼のF1活動はおせじにも順調とはいえない。
フォース・インディアは苦戦の真っ最中。ヒュルケンベルグとメキシコ人チームメートのセルジオ・ペレスは、今か今かと改良型マシン登場を待っている。
かつてはフェラーリ移籍をささやかれたヒュルケンベルグ。しかしパドックで彼の評判を総合すると、F1優勝とタイトル獲得のチャンスはもはや過ぎ去った。
同じことはロマン・グロージャン(ロータス)にも言える。
彼はカナダで『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように語る。「おととしの2013年、みんなニコ(ヒュルケンベルグ)と僕の話でもちきりだったが、いろいろあって成績が落ちると、人々の話題から消えるのはあっという間だ」
2年前にフルタイムでポルシェのシートを得てF1を去ったマーク・ウェバーは、ヒュルケンベルグのようなドライバーがF1で息切れを起こしてくれたら、むしろありがたいとイギリス『Racer(レ―サー)』誌で次のように話す。
「(F1から)ニコ・ヒュルケンベルグがやってきたね。僕は彼にこう話すんだ。「僕はポルシェで毎周プッシュしている。今はF1の方が耐久レースみたいにがまんの戦いじゃないか?」」
「誰もそのことに触れたくなさそうだが、事実だからしょうがない」
「今後より多くの(F1)ドライバーがWECに関心を示すだろう。スポーツカーは魅力にあふれるスポーツだからだ」
F1とルマンのダブルヘッダーで忙しいヒュルケンベルグ。しかし、やり残しの仕事がF1にあって、まだキャリアを終えるわけにはいかないと彼はカナダで語る。
「F1を引退しようと思って、このプロジェクト(ポルシェ)を決めたんじゃない」とドイツ『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に話すヒュルケンベルグ。
「いつの日かF1に代わる仕事になるだろう。でも今は、カッコいいと思ってかけ持ちをやっているだけだ」