■モナコからドイツ・ベルリンへ。過熱する初代チャンピオン争い!
電気エネルギーだけを動力源とするフォーミュラカーで競う「FIAフォーミュラE選手権」も後半戦に突入し、5月9日には、その初戦となるモナコ・モンテカルロ大会が開催された。
■【フォーミュラE】第8戦ベルリン・ドイツ結果
■【フォーミュラE】ポイントランキング
モナコといえば、F1での市街地コースを舞台にした激しいバトルでおなじみだが、フォーミュラEでもF1と同じコースの半分を使用した伝統のモナコならではのドラマチックなレースが展開された。
そんな第7戦モナコを終え、シーズンも残り4戦を残すのみとなった。
フォーミュラE解説者の元F1ドライバー、片山右京氏が伝統の第7戦モナコを振り返りつつ、5月23日に行われる第8戦ドイツ・ベルリン大会のみどころを、コース分析を交えながら紹介する。
<片山右京コメント>
■前戦モナコについて ■モナコの結果はこちら
モナコはレイアウトが人工的に作られた市街地コースとは違い、コーナーのRが自然ではないなど独特なんです。その中でフォーミュラEのマシン特性、重量バランスなどを考えると、1コーナーから2コーナー、3コーナーまでのシケインが見た目に狭かったので、何か起きるだろうと思っていたら案の定アクシデントが起きましたね。予選からモナコならではの邪魔をした、されたとドライバーがヒートアップしていました。
今回のモナコはF1で使用するコースの後半部分を使用するということで、ある意味初めてのコース。その中でのクラッシュでしたが、あれだけで済んだのは逆に奇跡だったと言えるでしょう。
予選を見ても、モナコではタイムをつなげて1ラップを完成させることが、F1でもフォーミュラEでも難しいということが改めてわかりました。逆にチャンピオンシップを争っている上位陣は本当にレベルの高いレースを見せてくれました。どのカテゴリーにも負けない、フォーミュラEの初めてのシーズンとは思えないすごいレースでしたね。そのレベルの高さにも驚かされました。
チャンピオンシップを争う3台がそのまま表彰台に上がりましたが、トップ争いがすごかった。先頭のセバスチャン・ブエミはペースコントロールをしながらバッテリーをセーブする。ルーカス・ディ・グラッシのアウディはピット作業が一番速いチーム。ピットに入ってもうまくすれば前にいけると思いきや、サイド・バイ・サイドに並んで抜けそうだけど抜けない、とか。
そのディ・グラッシに予選で邪魔をされたとヒートアップしたネルソン・ピケJr.は、ファンブーストを使ってストレートで差を詰めると、2コーナーでブレーキングを使いインに入ろうとするも百戦錬磨のディ・グラッシが抑える…。そんな前3台の争いは本当にレベルが高かったですね。
フォーミュラEの1年目、初めてのヨーロッパでのレースとなる伝統のモナコで新しいマシンがハイレベルのレースを見せた、というのは、世界中のモータースポーツファンを驚かすことになったのではないでしょうか。
■第8戦はドイツ・ベルリン大会
次のベルリンはモナコとは対照的。1周が2.5kmとフォーミュラEの中では比較的長めで、コーナーが17もあるんですが直角コーナーが一つもない。ですから、ドライバーにはベストのラインどりが求められ、チームはベストのセットアップをいち早く見つけなければいけないんです。
テスト走行ではチームのシミュレート技術が試されるし、仮に予選で順位を落とせば3強でさえ、優勝争いから脱落する可能性もある。チームやドライバーに求められるものが、よりハードになるのがベルリンのコースです。
基本的にはターン1までの長いストレートがファンブーストを使ってオーバーテイクが狙えるポイントですが、ターン5からターン6以降のターン10までのタイトなセクションのコーナーの連続では、ラインをクロスさせることでファンブーストがいらないオーバータイクが見られるかもしれない。
飛行場の跡地というフラットでコース幅が狭く、コーナーが多い、というコースを、モナコから短い期間でいかに自分のものにするか。そんなレースをシーズン後半戦に行うという意味でも、非常に面白い一戦になるでしょう。
■初代チャンピオン争い
1年目のシーズンも残り4戦、歴史に残る初代チャンピオンの争いは、ブエミ、ディ・グラッシ、ピケJr.の3人に絞られつつあると思います。モナコでの優勝でシーズン2勝目をマークしたブエミが順位を3位にあげて勢いがあるし、トップのディ・グラッシと2位のピケJr.の差もわずか。残り4戦は緊張感のある、目が離せないレースになります。
上位3人、3チームとも三者三様の良さがあるので、最終的に誰が総合優勝を手にするのか、予想は非常に難しいですね。ドライバー目線で言わせてもらえば、ピケJr.の熱い走りは子供っぽいけど面白いと思います。お父さん譲りでもあるし、この世界、あまりクール過ぎても華がないじゃないですか。
二世ではないですが、アイルトン・セナの甥ブルーノ・セナは、まだ何かが足りないと思います。例えば、たまに集中して攻め過ぎて自滅したり、ミスをする。前で何かがあるかもしれない、というリスクを予見する強さだったり、ここ一番では絶対にタイムを出すという速さが必要かな、と思います。
■期待のアムリンアグリ。亜久里さんは「寝て待て(笑)」
モナコでは、予選でアントニオ・ダ・コスタのマシンがクラッシュしたり、サルバドール・デュランがスタート直後に事故に巻き込まれたりと、アムリンアグリは踏んだり蹴ったりでしたね。(鈴木)亜久里さんが現場に行くといいことがない(笑)。果報は寝て待てと言いますが、亜久里さんは寝ていた方がいいんじゃないかな(笑)。
ただ、第4戦でダ・コスタが優勝していますが、フォーミュラEはまぐれで優勝できません。力があるから優勝したわけですから、必ずまた優勝するチャンスはあるでしょうし、表彰台ならまた上ってくれるでしょう。後輩として亜久里さんを応援しているし、日本人としても期待しているので頑張って欲しいですね。
■2015年5月23日(土)
「決勝(生中継)」 夜10時54分 BS朝日
「決勝ハイライト」 5月24日(日) 夜11時30分 BS朝日
5月30日(土) 深夜3時45分 テレビ朝日
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