現役F1ドライバー中、最多出走記録を持つベテランのジェンソン・バトン(マクラーレン)が、レッドブルからフェラーリに移籍したセバスチャン・ベッテルが、今季2戦目のF1マレーシアGPで移籍後初優勝を飾ることができたのにはツキもあったと次のように語った。
「彼(ベッテル)が運に恵まれたのは間違いないと言えるよ」
「こういうふうに状況がうまく味方してくれることもあるものさ」
確かに、勝敗を大きく分けることとなったのは、レース序盤にセーフティカーが導入されたときの判断の違いだったと言えるだろう。マレーシアGP決勝をポールポジションからスタートしてトップの位置をキープしていたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は、このタイミングでピットインしてタイヤ交換を行う作戦をとった。一方、ベッテルはそのままコース上にとどまることを選択。
ハミルトンのピットインによってトップに立ったベッテルとコースに復帰したハミルトンとの間には、やはりピットインしなかったクルマが数台はさまれる形となった。そして、それらのクルマにさえぎられて順位を上げることが難しくなった状況を利用することで、ベッテルが大きなリードを稼ぎ出すことに成功していた。
もしあのときセーフティカーが入らなければ、そしてもしあのときハミルトンとベッテルが同じ戦略をとっていたら、レースの展開もまた違う形になっていたかもしれない。
とは言え、今年からバトンのチームメートとなったフェルナンド・アロンソにとっては、今回のフェラーリの勝利は少しばかり苦々しいことに思えたかもしれない。5年間在籍しながら3度目のタイトル獲得がならず、今年からマクラーレンへと移籍したアロンソ。だが、ホンダエンジンを搭載したMP4-30はここまで予想以上の苦戦を強いられている。
マレーシアで開幕2連勝を逃し2位に終わったハミルトンも次のように語った。
「(決勝後に)セバスチャンのとなりに座りながら考えたよ。“フェルナンドはどう思っているかな?”ってね」
「(移籍しなければ)彼がそこにいたかもしれないわけだからね。物事のめぐり合わせというのは不思議なものだよ」
本来、2015年までフェラーリと契約していたアロンソ。その契約通りに今年もフェラーリに残っていれば、現在ベッテルが乗っているクルマに自分が乗っていたはずだ。
だが、アロンソ自身は、フェラーリが今後もメルセデスAMGと対等に戦えるとは思っていないことをほのめかしながら、自分は後悔などしていないとスペインの『El Confidencial(エル・コンフィデンシアル)』に次のように主張した。
「メルセデスAMGが30秒ほどの差をつけてオーストラリア(開幕戦)で勝ったのを見たときには、自分の決断が正しかったと確信していたよ」