今年のF1開幕戦オーストラリアGPが、見ている者に対してあまりいいイメージを与えるものではなかったのは確かだ。
■裁判ざたで始まったオーストラリアGP
レースが開催されたメルボルンではギド・ヴァン・デル・ガルデとザウバーによる法廷闘争が繰り広げられるという異常な状況の中でレース週末を迎えていた。結局、契約解除無効の訴えを起こしたヴァン・デル・ガルデが裁判に勝訴し、ザウバーは一時その存続さえ危ぶまれる状況に陥っていた。
元F2チャンピオンであり、スペインのラジオ局でF1解説者を務めるアンディ・ソウセックは、この一件に関して次のように語った。
「僕もGP2のときに同じような状況に置かれたことがあるんだ。フィジケラのチームでね。僕もギドと同じような気持ちだったけれど、これが現在のF1の現実なんだよ」
■決勝ではまたもメルセデスAMGが独走
そして、オーストラリアGP決勝がふたを開けてみれば、結局、昨年に引き続きメルセデスAMGの2台がほかのクルマを圧倒的に引き離すという展開で終わった。
オーストラリアでのF1シーズン開幕戦について尋ねられたソウセックは、「好ましくなかったし、楽しめなかったよ」と認め、次のように続けた。
「誰もが今年もメルセデスAMGが支配するであろうことは分かっていた。だけど、レッドブルやマクラーレンがあれほどひどいとは思わなかった。今年のフェラーリはよさそうだけど、それでもメルセデスAMGと戦えるほどじゃないしね」
「悲しいね」と言うのは、フォース・インディアのセルジオ・ペレスだ。
「シーズンが始まったばかりだというのに、すでにメルセデスAMGが有利なのは明白なんだからね」
■何年もひとつのチームが飛び抜けた状況が続くF1
「競争を見るために高いチケットを買うファンにとってもいいことだとは思えないよ」
そう続けたペレスは、次のように付け加えた。
「でも、こういうことは今に始まったことではないけれどね。以前はレッドブルがそうだったんだから」
マクラーレンで2度F1チャンピオンに輝いた実績を持つ元F1ドライバーのミカ・ハッキネンも『Hermes(エルメス)』に次のように語った。
「確かに、レースを見ていた人の中には退屈だと顔に書いてあった人たちもいたよ。だけど、それはメルセデスAMGが悪いわけじゃないんだ」
「彼らは、誰よりも速いクルマを造り上げただけなんだからね」
■わずか15台での戦いとなったオーストラリア決勝
だが、オーストラリアのレースに水を差したのは、強すぎるメルセデスAMGだけではなかった。復活が期待されたマノー・マルシャは結局出走せず、メルセデスAMGのライバルとして期待されたウィリアムズのバルテリ・ボッタスは予選中に負ったけがにより決勝には出場できなかった。
さらに、マクラーレンとレッドブルの2台がグリッドにたどりつく前に壊れてしまうというハプニングのおまけまでついた。これにより、決勝でスタートできたのは近年まれにみる15台ということになっていた。
「めったにないことだったけれど、あれは十分にクルマのテストができないということもその原因のひとつとしてあると思うよ」
そう語ったハッキネンは、次のように付け加えた。
「昔のようにもっとテストができていれば、戦いももっときっ抗してくると思うんだけどね」