メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフが、ウィリアムズのテストドライバーを務めるスージー・ヴォルフが自分の妻であるがために、彼女のキャリアの手助けをするどころか、逆に弊害となっていることのほうが多いと語った。
旧姓をストッダートというスージーは、かつてF3やDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)で活躍するドライバーだったが、2011年10月にトト・ヴォルフと結婚し、ヴォルフという姓を名乗るようになっていた。
■ウィリアムズに加入できたのは夫であるヴォルフのおかげ?
スージーがF1の世界に足を踏み入れることができたのは、その結婚のおかげだったとしばしば報じられてきた。事実、スージーは2012年にウィリアムズの開発担当ドライバーというポジションを得たが、その当時トトはウィリアムズの取締役の立場にあった。トトは2013年にウィリアムズを離れ、現在はウィリアムズにエンジンを供給するメルセデスのモータースポーツ責任者となっているものの、いまだにウィリアムズの株主としての身分も保有している。
そのトト・ヴォルフが、妻であるスージーについてフランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』に次のように語った。
「スージーは小柄だが、大きな個性を持つ女性なんだ。彼女は私が行く前にはメルセデスに所属していたんだ」
「私がHWA(メルセデスのDTMチーム)に興味を持ったとき、彼女はすでにDTMで走っていたよ」
■自分が夫であるがゆえに妥協を迫られるスージー
「私が少しばかり悲しい気持ちになるのは、私と知り合うずっと前から築き上げてきていた彼女のキャリアに対し、私が力になるどころか、それを傷つけてしまっていることだ」
そう語ったヴォルフは、さらに次のように続けた。
「彼女が“トト・ヴォルフの妻”だと言われるのをよく耳にするけれど、それはまったくフェアではないよ。彼女は、私のせいで利害関係が対立するという理由で契約を結ぶことができないスポンサーもあるんだ」
「彼女はこれまでもそうだったし、今もなお、私のせいで自分のキャリアをものすごく妥協せざるを得ないんだからね」
■スージーは本当に実力のあるドライバーだとヴォルフ
「彼女はウィリアムズのテストドライバーだけど、それは彼女がクルマに乗っていい仕事をしてきたからなんだ。私が株主だからという理由ではなくね。最初は女性を登用するというのは宣伝的効果を狙った発想だった。そのとき、求められるレベルに達していた唯一の女性がスージーだったんだ」とヴォルフは主張。
「チームは彼女をテストし、彼女はうまくやってのけた」
「DTMでは、彼女がトップ争いをしていたわけではなかったゆえに、みんなはあのスポーツがどういう形で運営されているかとか、誰が競争力に劣るクルマに乗っているかとかも知らないままにコメントをしていたよ」
ヴォルフは次のように締めくくっている。
「でも、彼女が直接デビッド・クルサード(元F1ドライバー)やロベルト・メルヒ(スペインの若手ドライバー)たちと争っていたときには、彼女も彼らと同等のレベルだった。そしてウィリアムズでのテストでも彼女は自分自身のレベルの高さを示してみせたよ」