かつてアイルトン・セナのチームメートとしてマクラーレン・ホンダで活躍したこともあり、日本でもファンの多い元F1ドライバーであるゲルハルト・ベルガーが、最近ささやかれているF1パドック復帰のうわさを否定した。
ドライバーを引退後も、BMWのディレクターやトロロッソの共同オーナーとしてF1活動を行っていたこともあるベルガーだが、2011年にF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のシングルシーター委員長に就任し、F1の下位カテゴリーの再編などに取り組んでいた。
だが、ベルガーが最近その職を辞したことが明らかとなり、またF1の現場へと戻ってくるのではないかとのうわさを強めることとなっていた。
最初に報じられたうわさは、ベルガーがマクラーレン・ホンダに加わる準備をしているようだというものだった。これに関し、マクラーレンでは「まったくのナンセンス」だと否定を行っていた。
そして、最近、かつて在籍していたこともあるフェラーリから、F1経験がほとんどない新人チーム代表であるマルコ・マティアッチのアドバイザーとしてベルガーにオファーが出されたようだとの報道も行われている。
だが、55歳となるベルガーは、母国オーストリアの『APA通信』に対し、FIAの職を辞したのはF1の現場へ戻るためではないと次のように語った。
「ジャン・トッド(FIA会長)のために1年間だけ頑張ってみようと思っていたんだが、すでに3年もたってしまった」
「それにはすでに十分な時間もかけたし、これからは自分のビジネスを拡大していきたいんだ。それに、また父親にもなったしね」
「もちろん、自分の名前が何度も違うチームでうわさにのぼっていることは知っているよ。でも、本当にもう十分やり尽くしたんだ」
ベルガーは、最近のマクラーレンやフェラーリに関するうわさは完全に「憶測」に基づくものだと次のように続けた。
「そういう事実は何もないよ。フェラーリともマクラーレンとも、そういうことに関して話をしたことなどないんだ」
F1通算210レースの出走経験を持ち、通算10勝という記録を持つベルガーは、いまでもF1を愛しているものの、またF1のようなライフスタイルに戻りたいとは思わないと言う。
「F1で活動するということは、1年中ジプシーみたいな生き方をすることを意味するし、レース以外の週末や休日はオフィスで過ごすことになってしまう。だから、自分の時間を120パーセントそれにささげてもいいと思えなければ、それは無理だね」
「それ(F1現場復帰)は僕にとってはものすごく難しい決断であることは間違いないよ。でも、基本的な姿勢として、絶対という言葉は口にすべきではないけれどね」
一方、ベルガーは、最近ケータハムとマルシャが破産手続きに入ったという事実を受け、それは現在のF1の収益分配モデルが間違っているのだと認め、次のように語った。
「CVC(F1筆頭株主であるキャピタル・パートナーズ)が危機的状況に陥っていないのは確かだ。彼らはずっと大金を稼ぎ出しているからね」
「最終的に、もしメルセデスAMG、フェラーリ、そしてレッドブルだけになったりしたら、もはや面白い選手権ではなくなると思うね。僕の考えとしては、すべてのチームがいることでショーも成り立つんじゃないかと思うよ」