「セバスチャン・ベッテルが苦境に立たされたフェラーリを立て直すような活躍ができるとは思えない」
そう語ったのは、7度F1チャンピオンに輝いた伝説的ドライバーであるミハエル・シューマッハのマネジャーを務めていたウィリー・ウェバーだ。
シューマッハのマネジャー時代には、フェラーリからの収入の20パーセントを受け取るという破格の契約をしていたことで「ミスター20パーセント」とのあだ名が付けられていたウェバーだが、レッドブルで4年連続F1チャンピオンに輝くという偉業を達成したベッテルの性格は、おそらくフェラーリには合わないのではないかとの懸念を持っているようだ。
うわさでは、フェラーリではF1アメリカGP(11月2日決勝)の数日前にフェルナンド・アロンソの離脱、そしてベッテルの加入を正式に発表するだろうと言われている。
ベッテルと同じドイツ出身のシューマッハは1996年にフェラーリへ移籍。このときはベネトンで1994年と1995年の2年連続でF1チャンピオンの座についたあとでのチーム移籍だった。シューマッハはそこから4年間はF1タイトルに手が届かなかったものの、2000年から2004年まで5年連続でF1タイトルを獲得。フェラーリの黄金時代を築きあげることとなった。
■フェラーリドライバーが抱えるプレッシャーは比べ物にならない
だが、ウェバーはドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のように語った。
「セバスチャンは、ミハエルよりももっと感受性が強い」
「フェラーリでは、もし何かうまくいかないことがあると、そのときのプレッシャーはほかのチームとは比べ物にならないほど大きいんだ」
「常に平和で楽しいことばかりじゃない。政治的なことが山ほどあるからね」
そう語ったウェバーは、次のように付け加えた。
「フェルナンド・アロンソでさえそれに対処できないとしたら、誰もそれをうまくやれる者はいないと思うね」
■かつてのようなフェラーリに有利な時代は終わった
ベッテルを少年時代から育て上げ、F1のスターダムに乗せたのはレッドブルのドライバー育成責任者であるヘルムート・マルコだった。だが、そのマルコも来季から最大のライバルであるフェラーリへ移籍するベッテルが、かつてのシューマッハのような活躍を見せることができるとは考えていないようだ。
「ミハエルのころは、テストでの走行距離も制限されていなかったし、タイヤサプライヤーであったブリヂストンとも密接な協力関係にあったことで有利に立てていた」
「だが、現在はもはやそういう形でアドバンテージを得ることはできないからね」とマルコは付け加えた。
■ベッテルの実力はアロンソには及ばない
さらに、2011年シーズン開幕前にラリーレースで起こしたクラッシュにより大けがを負い、F1から離脱することなったロバート・クビサも、ベッテルの能力はアロンソに及ぶものではないと考えている。
「ベッテルはフェルナンドほど強くはないと思う」
アロンソと親しいことでも知られるクビサはそう語ると、さらに次のように続けた。
「最強のクルマでなくても、フェルナンドはレースで勝利することができていたからね」
■来季のフェラーリF1カーの実力は?
さらに、最近フェラーリ本部のあるマラネロからも、ベッテルにとってはあまりうれしくないであろう声が聞こえてきている。
イタリアの専門誌『Autosprint(オートスプリント)』は、 “666”という暗号名が付けられたフェラーリの2015年型車開発プロジェクトにおいて、エンジニアたちは開発中の第1号車で行った風洞テストによる空力数値に満足することができなかったと伝えている。
フェラーリの2015年型車は、2013年にロータスから移籍してきたジェームス・アリソン(テクニカルディレクター)がフェラーリで初めて手掛けるF1カーとなる。