今季は苦しい状況が続いているセバスチャン・ベッテル(レッドブル)だが、19日(金)から開幕したF1シンガポールGP(21日決勝)において、さらに厳しい局面を迎えることになってしまった。
【結果】F1第14戦シンガポールGPフリー走行2回目の順位、タイム差
ベッテル、そしてレッドブルは、現在の苦境からの脱却を目指して、ナイトレースとして行われるシンガポールに新しいシャシーとともに乗り込んできた。
だが、19日に行われた金曜フリー走行1回目では、そのシャシーのほうではなく、ルノーのパワーユニットのほうに問題が発生してしまった。この結果、チームはエンジンの積み替えを余儀なくされ、ベッテルはフリー走行2回目ではほんの数分しか走行できないという状況を迎えていた。
■今季6基目のエンジン投入はもはや避けられないベッテル
今季は、エンジンをはじめとするパワーユニットの主要コンポーネントはシーズンを通じて5基までの使用しか認められていない。そしてベッテルはすでに5基目のエンジンを使っている状況となっており、今回のトラブルにより、今後ベッテルは6基目のエンジンを使わざるを得なくなることがほぼ確実となってきている。
フリー走行1回目でのエンジントラブル発生に関し、エンジンサプライヤーであるルノーのF1エンジン責任者レミ・タファンは次のように語った。
「あのエンジンはまだ寿命が半分は残っているはずのものだったんだ。だからかなり驚かされたし、ものすごく残念に思っている。我々は、まだわずかながら6基目のエンジンを投入することなくシーズンを乗り切れるのではないかとの期待を抱いていたからね」
「今回の故障により、我々としては6基目のICE(パワーユニットのうちの内燃機関部分)を投入せざるを得なくなるだろう」
■シンガポールGPでのペナルティーは回避
6基目のエンジンを使うことになれば、決勝スタート時に10グリッド降格のペナルティーを受けることになる。だが、必ずしもシンガポールGPにおいてそのペナルティーを受けなくてはならないという意味ではない。
「あれは金曜日用のエンジンだったんだ」とチーム代表のクリスチャン・ホーナー。
「理想的には、あのエンジンを日本GP(10月5日決勝)の金曜日にも使いたかったんだ。もうそれができないことは確かだけどね」とベッテルも続けた。
ベッテルは、金曜フリー走行2回目の終了直前に数周を行ったが、そのときに搭載されていたエンジンはシンガポールGPに「レース用」として持ち込まれていたものだった。
レッドブルとルノーは、今後ベッテルが10グリッド降格ペナルティーを受けなくてはならない場合、どのレースで6基目のエンジンを投入すれば一番不利が軽減されるか、ということについて検討をしていかなくてはならない状況だ。
■6基目エンジン投入レースは戦略的視点で決定へ
タファンは次のように続けた。
「これからの問題は、6基目のエンジン導入を避けるということではなく、戦略的にどこで6基目を投入するのがいいかということになる」
ホーナーは、「セバスチャンは、現時点ではあまりツキがないようだ」と語った。
だが、ベッテル本人はこれについてあくまで現実的な見方をしているようだ。
「僕たちは、いつかはもうひとつ余計にエンジンを使うことになるのはすでに分かっていた。だから、今回のことでそれほど大きく計画が変わることはないと思うよ」
昨年までベッテルのチームメートであったマーク・ウェバーは、レッドブル在籍中には自分のクルマのほうばかりにトラブルが集中していたことに言及しながら、まるで今年のベッテルはかつて自分が乗っていた不運なクルマを引き継いだように見えると語っている。
常に迷信などを否定することで知られるベッテルだが、今季自分とチームメートのダニエル・リカルドとの違いは、単なる偶然の結果だと主張している。
「そこに理由なんてないと思う」と語ったベッテルは、次のように付け加えた。
「もちろん、何かが壊れるときには、常にその理由があるものだよ。だけど、なぜそれが片方のクルマにだけ起きて、もう1台には起こらないのかということについては説明のしようがないと思うんだ」