F1イタリアGP(7日決勝)では、世界中のファンの視線がスタート直後に迎える最初のシケインに注がれることになるだろう。
ポールポジションからスタートするルイス・ハミルトンと、2番グリッドからスタートするニコ・ロズベルグのメルセデスAMGのチームメート同士が果たしてそこでどういう攻防を繰り広げるのかに大きな興味が集まるのは間違いないことだ。
■どうなる「スターウォーズ」の展開?
ノーズに3つの頂点を持つ星の形をしたメルセデスのロゴが描かれたマシン同士による戦いは、ドイツのメディアでは「スターウォーズ」と名付けられている。前戦ベルギーGPが行われたスパ・フランコルシャンでロズベルグとハミルトンがクラッシュを演じたときには大騒動となったが、いまだにほかのドライバーたちにもそのことに関して質問が浴びせられる状況が続いている。
フェラーリのフェルナンド・アロンソなどは、そうした質問には飽き飽きしたと肩をすくめながら次のように語った。
「スパのことに関してなぜ僕がこれほど多くの質問に答えなきゃならないのか分からないよ」
もちろん、あのスパのクラッシュが2週間たった今でもこれほど大きく騒がれるのは、今季のF1チャンピオン争いを左右する重大問題だったからにほかならない。
■これまで通りチームオーダーは出さないとメルセデスAMG
メルセデスAMGでは、批判の声もあるものの、スパの結果に基づいて「チームオーダー」を出すことはせず、今後も2人には公平に戦わせるという姿勢を表明している。
メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、次のように語った。
「(スパの)レースが終わって1分半くらいのときは真剣に(チームオーダー発令を)考えたよ。だが、時間がたつにつれ、そういう感情もおさまった」
「我々はシーズン開幕当初から宣言していたやり方を続けることにした。彼らにはレースをさせるよ」
だが、その「彼らにレースをさせる」という言葉の意味は、スパでのクラッシュが起こる前と完全に同じ条件だというわけではない。そしてハミルトンとロズベルグも、イタリアGP決勝で最初のシケインに向かう際、どうすることがチームから望まれているかについてはよく分かっている。
ヴォルフは次のように続けた。
「日曜日の朝にはいつものように会議を行うことになるし、そこでは、最初の2、3周ではどうするべきかということがテーマのひとつになると思っている」
「守るべき一線については非常に明確だし、明日の決勝でどうするべきかということはかなり明らかなはずだ。私はどういう形でレースが展開するかについては何の疑いを持っていないよ」
■どうなるかは分からないとドライバーたち
原則として自由にレースができるとはいえ、その細かい部分について一定の制約が課せられることは、特にハミルトンにとっては少しばかりやりづらいことになりそうだ。ハミルトンはベルギーGPでロズベルグとの差を29ポイントにまで広げられているにもかかわらず、今後はさらに注意深くレースをするように要請されることになるからだ。
だが、そのハミルトンは公には今後もアクセル全開で行くと宣言している。
モンツァでポールポジションを獲得した後、報道関係者から日曜日の決勝では何か制限が課せられるのかと尋ねられたハミルトンは「自由にレースできるよ」と答えている。
だが、ヴォルフが、特にレース序盤では自制することを求めていることについてどう考えているかと質問されたハミルトンは次のように付け加えた。
「(レースが始まれば)そんな声は全く聞こえなくなるよ」
イタリアGP決勝をハミルトンと並んで最前列からスタートするロズベルグにも同様の質問が浴びせられた。つまり、ハミルトンを追い抜くチャンスがあれば、レース開始早々でもそれにチャレンジするのか、あるいは少し思いとどまって様子を見るのかということだ。
「その質問へ答えることはできないな」
そう答えたロズベルグは、「全く同じような状況などないからね」と付け加えた。
■あくまでも自分のレースを貫くとハミルトン
だが、もしスパと同じような状況となった場合はどうだろう? つまり2人がクラッシュしそうな状況となり、どちらか一方が後ろへ下がることを余儀なくされたような場合、身を引くべきはポイントで大差をつけられているハミルトンのほうだろうか?
その質問を向けられた2008年のF1チャンピオンであるハミルトンは、次のように答えた。
「いつもやっていることと同じことをするよ。僕はこれまでに何年もレースをしてきているし、ほかのドライバーとクラッシュを起こしたことはそれほど多くないからね。だから、僕は自分のやり方でレースを続けるよ」
「僕は、正しいやり方で優勝したいと思っているんだ」とハミルトンは付け加えた。
■ロズベルグは計算できる立場にあるとニキ・ラウダ
一方、メルセデスAMGの非常勤会長であるニキ・ラウダは、ロズベルグに対してはどういうアドバイスをすればいいかが分かっているという。ラウダは『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「ニコはすべてを犠牲にしてまで勝利にこだわる必要はないんだ。もし彼がここ(モンツァ)で2位になったとしても、失うものは何もないからね」