モンツァでは4日(木)、FIA(国際自動車連盟)主催のF1第13戦イタリアGP公式記者会見を皮切りにレースプログラムが始まった。ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが出席するとあって、メルセデスAMGコンビの戦闘再開を見届けようと記者会見場には大勢の報道陣が詰めかけた。
FIAによる憎らしいほどの演出だが、ある記者は、二人のあいだに座ったフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)を「平和の特使」と呼んでいた。
「プレスルームにこれほどの人がいるのを見るのは初めてだよ」といって微笑むハミルトン。「一段落のうえ先に進んで、つくづくよかったよ」
たしかに、前戦ベルギーGPの事故でバラバラに飛び散ったカーボンの破片に象徴されるような雰囲気は、ほとんど記者会見場から感じられない。ハミルトン本人も、ロズベルグとの衝突についての発言は、すべて「報道声明に」集約されていると強調した。
平和の使者アロンソなど、2014年シーズン残りの7戦で見られるであろうコース上の戦いを「美しいバトル」と形容していた。
「彼らの問題はいわば、ぜいたくな悩みだ。二人は世界選手権を戦っているんだからね」と、アロンソ。
■ケータハムの動向
この日のモンツァは、記者会見場以外でも多くの動きがあった。5日(金)のフリー走行でケータハムを初めて走らせる新人ロベルト・メリは、スーパーライセンスが取れたら第14戦シンガポールGPで実戦デビューを果たす見通しだ。
「今のところ考えているのは、FP1(最初のフリー走行)を走って感触を確かめることだよ。マシンや他のみんなからどれだけ学べるか、それ次第だ。その上で次の目標を定める」と、期待で胸いっぱいのメリ。
今回マーカス・エリクソンと並んでレースに出場するのは、半日前まで東京にいた小林可夢偉だ。まさか12時間かけてイタリア行きの便に乗るとは、夢にも思わなかっただろう。しかしシンガポールでメリのF1実戦デビューが決まれば、またしてもシートを失う。
「レースに関することならお話します」と、報道陣に囲まれた可夢偉はいう。「政治的な話題はかんべんしてください。今は簡単な状況ではないので」
■いっぽうマルシャでは
マックス・チルトン(マルシャ)がベルギーGPで起きたシート争奪戦について説明を行った。経済的に苦しいマルシャだが、今はシーズン残り全戦に出場するつもりだという。
「あれは、ビジネス上の決定変更に伴って起きたことだ。今はふだん通りさ」と、チルトン。
■ドライバー市場の動き
相変わらず、2015年F1のイス取りゲームが活発だ。ロータス退団が有力視されるロマン・グロージャンは、すべてがアロンソの動向次第だと次のように話す。
「フェラーリとアロンソがどうなるか、待ちの状態だ。彼らが決めるころには市場も動いていることだろう」というグロージャン。「アロンソがドライバー市場の鍵を握っているよ」
だが当のアロンソは、憶測の打ち消しにここ数日を費やすばかりだ。4日(木)も、2007年当時の彼とマクラーレンの関係がうまく行かなかったのは「チームのマネージメント」が原因だったと語っていた。
当時も今もチームのトップはロン・デニスだが、その彼は盛んにアロンソを誘っている。
デニスが声をかけているのはアロンソだけではなさそうだ。もう一人の相手はハミルトンである。メルセデスAMGを率いるトト・ヴォルフによると、ハミルトンとの契約交渉は現在、選手権争いのまっただ中で「凍結」状態にある。
「いやいや」と、4日(木)のハミルトン。「僕が何かを止めていると話をした覚えはないけどね」
「でも、僕の将来はメルセデスAMGとともにあるとはいっておきたい。僕はこのチームでとても幸せだ」と、ハミルトンはいう。
■パラボリカ問題
最後に、4日(木)でもうひとつ大きな話題は、FIAがパラボリカに行った工事だ。安全の名のもと、グラベルのほとんどがアスファルトで塗り固められたのだ。
コースを視察したほとんどの者は、話にきいて予想したより悪くないとの印象を持った。同コーナーで深刻なミスを犯せば、待っているのは以前同様、破壊的な結果だ。
ところがセルジオ・ペレス(フォース・インディア)の見方は否定的だ。
「パラボリカはモンツァを象徴するコーナーだった。それが失われて残念でならないよ。なぜだか理解できない」と語るペレスだった。