ジャン・トッドFIA(国際自動車連盟)会長は、いくつかのF1チームが撤退に追い込まれそうな状況であることを認めた。
オーストリアGP開催のために美しく生まれ変わったレッドブルリンクだが、パドックはどこか憂うつな雰囲気が漂っている。
テレビ中継の視聴率は下降気味。ハイブリッド化した「クリーン」なF1は意見が分かれるところ。ソーシャルメディアを毛嫌いしている様子のバーニー・エクレストン。苦しまぎれとしか思えないエンジンノイズと火花の細工。加えて静止状態からのレース再スタートも検討されている。
それに引き換え、膨大なF1参戦予算を何とか抑えようとする最近の動きでは、強大な力を持つチームが経営に苦しむ小チームをねじ伏せたようにしか映らない。
先週ロンドンでF1委員会が開かれたものの、すでに退けられた予算上限策の代わりに提出された経費削減案は、ほぼすべて握りつぶされた。
「これまで目立った経費削減は何ら達成されていない」と話すのは、今季苦戦しているザウバーのチーム代表で共同オーナーでもあるモニシャ・カルテンボーンだ。
「いったいFIAはどう対応するのだろう。こんな形でどのようにF1を統括するのか、私には不思議でならない」と、カルテンボーン。
オブラートに包む形でトッドのリーダーシップに疑問を呈したカルテンボーンだが、かつてフェラーリを率いた経験を持つトッドも、いら立ちを隠さない。
「いくつかのチームが変化に対して反抗的でね」と、トッドはオーストリア『Salzburger Nachrichten(ザルツブルガー・ナッハリヒテン)』紙に話す。
FIA会長としてのトッドの手法を、前任者のマックス・モズレーと比べるF1関係者は多い。机をバンバンと叩く勢いで、挑発的な態度をもって強引にイニシアチブを示すのがモズレーの姿勢だった。
「誰もが生き残れる建設的な解決策」を目指したが、「反抗的な」チームはこれを押しのけた。以上のようにトッドは打ち明ける。
「認めるよ」と、ソフトな語り口のトッド。「(経費削減)の要求実現は予想したより困難だ」
「全員の同意など、これから絶対にあり得ない。そのことに気づいた」とトッドはいう。「従って私は最良の妥協策を探ることにする」
だが、それも叶いそうにない。すでに結果は出ている。大幅な経費節減策はなくなり、ヨーロッパ以遠のテスト中止や風洞実験時間のさらなる短縮といった、ぜい肉のそぎ落としに落ち着くのだ。
「これでいくつかのチームは脱落するかもしれない」と話すトッド。「過去にもたびたびあったことだ」
「だが今のF1は、ここ数年に比べて間違いなく安定していると思う。それにもちろん、チームの新規参入は歓迎だ」
幸いにも2チームが参戦を控えている。ひとつはアメリカからジーン・ハース。それと、元HRTのチーム代表コリン・コレス率いるルーマニアのチームだ。
「アメリカ組は2016年に加わる」と、トッド。
「コリン・コレスのフォルツァ・ロッサも同様に(参戦が見込まれる)」とするトッドだが、コレスには条件がつく。「彼らが要求事項を満たせばの話だ。今のところ、彼らにはライセンスを与えていない」