伸びしろのないドライバーを容赦なく突き放すF1チームといえば、レッドブルだ。姉妹チームのトロロッソで3年目のジャン-エリック・ベルニュにシートを失う不安はないのだろうか。
未来のレッドブルを担うドライバー育成を目ざすトロロッソは、設立から9年が経過。3年連続で同チームのマシンに乗ったドライバーは、フランス人のベルニュを含めて今まで二人だけだ。
もう一人はスイスのセバスチャン・ブエミ。彼はそこそこの成績を上げた2011年を最後に解雇された。
今のところ、24歳のベルニュにあまり明るい材料はない。今年加入した十代のダニール・クビアトはベルニュと同等のポイントを重ね、未来のチャンピオン候補といった呼び声もあるほど活躍している。
対照的に今季のベルニュは存在が薄い。
先週末スパ・フランコルシャン(ベルギー)で開かれたフォーミュラ・ルノー3.5シリーズの一戦でレッドブルのF1マシンに乗ってデモ走行したベルニュは、『Italiaracing(イタリアレーシング)』のインタビューを受けている。
4年続けてトロロッソで走ったドライバーは、いまだかつて存在しない。そのことに不安は?
「そうだね。もしあなたのいうことが本当なら、僕にはどうしようもないよ」といってほほ笑むベルニュ。「荷物をまとめて家に帰ろうかな」
「まじめな話、僕はすべてが結果で判断されるとは思わない」と、ベルニュ。F1パドックでは彼のことを「ジェブ」と呼ぶほうが通りはよい。
「レッドブルもトロロッソも、もうダメだと思うドライバーはちゅうちょなく切り捨てる。もし僕がチームの信用を失ったなら、昨年のうちにクビになっていたはずだ」
「実際どうなんだろうね。僕はまだチームに所属している。ということは、彼らは僕と僕の実力を信用しているんだよ」
GP3のタイトル獲得後、一足飛びにトロロッソ入りしたクビアトは、ベルニュに比べてまだまだ経験不足だ。そんな新人にスポットライトをさらわれているといった評価は、ベルニュにとって不本意である。
「前にもいったとおり、技術陣と僕のチームワークは大きく進化した」と語るベルニュ。「それが実を結びつつあるのは、成績が示すとおりだ。それはチームも実感していることだよ」
「チームの中では素の自分でいられる。僕の家族といってもいいくらいだ。チームも、せっかく機能している関係を壊す真似はしないと思うよ」と話すベルニュだった。