12日(火)から、先週末F1スペインGP(第5戦)が開催されたバルセロナ-カタルーニャ・サーキットで2日間にわたってシーズン中のF1公式テストが行われている。そして、2日目の13日(水)に特に注目を集めることになりそうなのが、話題に上っているメルセデスAMGによる「メガホン式」排気管のテストだろう。
1メートルほどの長さのトランペットのような形状をした排気管アタッチメントの画像はすでに明らかになっているが、それを実際に見たという『Bild(ビルト)』のニコラ・プール記者は、「ものすごく軽量で、ほぼ1.5キログラムほど」であるとともに、素材が何であるのかは不明であるが「排気管の先の手前部分に小さな穴が開けられている」とリポートしている。
この「メガホン」は、ニコ・ロズベルグが乗るクルマに装着され、13日の公式テストにおいて午前中のセッションでお目見えすることになっている。
今年導入された新V6ターボエンジンが昨年までと比べて大人しい音しか発生しなくなったことに対する不満の声が広がっていたが、この装置によってかつてのような「うるさい」ほどのF1サウンドを聞くことができるのではないかと楽しみにしている者も少なからずいることだろう。
だが、F1が時代の流れに乗り、これまでよりも洗練され、より環境にも優しいエンジンを導入したにもかかわらず、わざわざこうした手法で人為的に音を大きくしようという試みを好ましいことだとは考えていない者もいる。
かつてマクラーレンやフェラーリで活躍していた元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、『APA通信』に次のように語った。
「F1カーの音を大きくしようという話をするなんて、ばかげたことだよ」
「そうした議論はナンセンスなだけだ」
だが、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)はこの問題にかなり真剣に取り組んでいる。現在のF1エンジンサプライヤーであるメルセデス、フェラーリ、そしてルノーの3社とともに、音響の専門家を交えて、エンジン音の増大化にむけた取り組みを行っている。
ルノー・スポールF1のロブ・ホワイトは次のように語った。
「FIAでは何人かの音響専門家を抱えていて、彼らが我々のところに訪れ、我々が実験室で行ったテスト結果などを調べていったよ。それには音の測定結果も含まれていた」
だが、ルノー・スポールF1の社長であり、ホワイトのボスであるジャン・ミシェル・ジャリニエは、F1は、たとえ音が小さくなってしまったとはいえ、これまでよりも効率化された新しいエンジン・テクノロジーを恥じるべきではないと主張している。
ジャリニエは、「時代の流れとともに歩まなくてはならない」とし、「もはやV10やV8時代のように100kmごとに60リットルもの燃料を消費するような時代ではないんだ」と語っていた。
また、今季のF1カーが発生する大人しい音は、最新かつ素晴らしいテクノロジーの産物であるとして、逆に称賛されるべきだとの声もある。
ホワイトも次のように続けた。
「これ(2014年型パワーユニット)は少ないエネルギーで稼働するんだ。効率性がかなり高められており、それゆえ後方で発生する音は小さくなっている」
「私はこうしたエンジンが発生する音をひどいとする意見には賛成できない。逆に、そういう音がかき消された中にこそ前向きなメッセージがあると感じているよ」
ホワイトは、『Daily Mail(デイリー・メール)』に対し、もっと音を大きくしてほしいという声に対し耳をふさぐつもりはないと語っている。だが、メルセデスAMGのライバルたちは、今季すでに圧倒的な力を見せつけているメルセデスAMGが、この「メガホン式排気管」を備えることで、さらに自分たちのパフォーマンスを高めようとしているのではないかと疑心暗鬼になっているのも事実だ。
ホワイトもこれを認め、次のように語った。
「中短期的に見て、私は今回の課題(エンジン音)に対応した結果が、直接的あるいは間接的を問わず、自分たちのライバルよりもパフォーマンスを向上させるような状況を作り出すようなことがあってはならないと考えている」