F1最高責任者バーニー・エクレストンは、F1管轄団体のFIA(国際自動車連盟)と全面戦争も辞さない構えを見せている。
エクレストンは、今年から小さくなったエンジン音や燃料を制限した複雑な新ルールを激しく批判しており、変革に向けて精力的に動いていると見る者は多い。
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のミハエル・シュミット記者によると、V6ターボエンジン採用をめぐる戦いにFIAが勝利したことに、エクレストンは激怒しているのだという。
この権力争いが、かねてから懸案のF1予算制限に陰を落とした。
まず、2015年の予算を1チーム1億5,000万ユーロ(約212億円)に制限する案が、すぐにも合意に達する見込みだとFIA会長ジャン・トッドが発表した。
「これまでに行った議論すべてから、チームの大半とFIAと権利者らは、このコスト制限を確かに望んでいると結論づけている」とトッドは話していた。
ところが、わずか数時間後にすべてがひっくり返ってしまった。
シュミット記者によると、6チームからなるF1ストラテジー・グループのうち、フェラーリ、レッドブル、メルセデスAMGの3チームが、2億6,000万ユーロ(約368億円)という代案を提案したという。
この金額では、実質的に「制限」とは言えない。
これを受けてトッドが「突然ストラテジー・グループの6チームすべてが予算制限反対にまわった」と言うまでになっている。
ストラテジー・グループの残る3チームは、マクラーレン、ウィリアムズ、ロータスである。
シュミット記者によると、トッドがストラテジー・グループの突然の反対を知ったのは、ほかならぬエクレストンからの書面によってだったという。
エクレストンは、トッドとFIAを追い詰めるべく動いているかのように見える。
エクレストンがエンジン音やルールを批判し、つまらない、複雑すぎると不満を口にし続けているのは、F1の価値を下げて乗っ取ろうとしているからだという陰謀説もささやかれていた。当初は突飛に思えたこのうわさだが、こうなると、もっともらしく聞こえてくる。
エクレストンは、FIAを完全に閉め出そうとしているのだろうか。シュミット記者は、この戦いにエクレストンは真剣で、FIAが権利を持つ「フォーミュラワン」という名称をやめて「GP1」にする準備までしているほどだと伝えている。