レッドブルがダニエル・リカルドを正式に2014年のドライバーに指名したことによって、姉妹チームのトロロッソに空きシートがひとつできた。
つい先日までF1に一番近いとされていたのは、レッドブルのジュニア・プログラムで頭角を現したポルトガル人のアントニオ・フェリックス・ダ・コスタだ。
ところが先日報じられたように、今季フォーミュラ・ルノー3.5シリーズに参戦するダ・コスタは、このところ苦しい戦いを強いられている。
ダ・コスタに続くドライバーとしては、若干18歳のスペイン人、カルロス・サインツJr.がいる。トヨタで2度WRC(世界ラリー選手権)を制した、あのカルロス・サインツの息子だ。ところがトロロッソ代表のフランツ・トストは、7月に次のようにサインツJr.起用の可能性を否定している。
「彼は2、3年したらドライバーとして成熟し、晴れてF1に上がれると思う」
さらに別の候補として、ブラジル人GP2ドライバーのフェリペ・ナスルがいる。ドイツ『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌によると、ナスルには金融最大手のブラジル銀行とテレビ局スカイ・ブラジルの後ろ盾があり、トロロッソのシートを狙っているという。
F1最高責任者のバーニー・エクレストンは、8月に次のように語っていた。「ブラジル人ドライバーが、ひとり欲しいところだ」
トストは3日(火)、リカルドの後任を指名するには時期尚早と、次のように語った。
「我々は、あらゆる可能性を検討して後日、決定を下す。取り分け急ぐ必要性は感じない」
ただ、オーナーのディートリッヒ・マテシッツは、2005年に旧ミナルディをレッドブル傘下に収めた際、同チームをレッドブルのドライバー育成プログラムの“最終ステージ”と位置づけた。トストもこの日、同じ点を強調していた。そうなると、GP2で花開いたばかりのナスルは候補としてどうだろうか。
「ダニエルのレッドブル昇進は、プログラムの必要性を証明した。また、トロロッソも彼に正しいドライバー教育を施したと自負している」と、トストは語る。
だが、いかに準備が整っていても、F1のトップチームで世界王者のセバスチャン・ベッテル(レッドブル)とコンビを組むからには、慣れるまでにそれなりの時間が必要だ。
レッドブルのアドバイザー、ヘルムート・マルコは、リカルドに「3戦ないし5戦」の猶予を与えるとしている。
1980年のF1世界チャンピオンでオーストラリア人のアラン・ジョーンズは、リカルドにもっと時間を与えるべきという意見だ。
「(レッドブル・ヤング・ドライバー)プログラムは実に多くの若者を取り込んでいるが、そのほとんどは生き残れない。ダニエルは数少ない生存者だよ」と、ジョーンズはメルボルンの地方紙『The Age(エイジ)』に語っている。
「もしダニエルが(レッドブルで)真価を発揮するのに1年ほどかかるとしたら、おそらくチームはそのことを折り込み済みのはずだ」
やはりオーストラリア人でマクラーレンのスポーティング・ディレクター、サム・マイケルもまた、リカルドがモノになるまで多少の時間が必要と考えるひとりだ。
「もし、彼が加入してすぐさまセバスチャン(ベッテル)級の速さを発揮したら、それはそれで驚きだよ」と、グランプリ前の恒例、ボーダフォン主催のマクラーレン電話インタビューでコメントしたマイケル。
「しかし、結局のところF1は食うか食われるかの戦いだ。なるべく早く結果を出して実力を証明することが彼には求められる」と語るマイケルだった。