ロシア企業との新規スポンサー契約は、ザウバーの救世主として歓迎されたはずだった。しかし、うわさによれば、ザウバーはいまだ危機的状況を脱していない。
ロシア政府ともつながりを持つロシア企業数社がザウバーに対して巨額な投資を行うことが先日報じられたが、当面は返済が急務のザウバーが抱える負債のみを支払うことが提案されたとみられる。
また、『Welt(ヴェルト)』紙は、17歳のロシア人ドライバー、セルゲイ・シロトキンが来季、レースドライバーとしてザウバーからF1デビューするために必要とされる統括団体FIA(国際自動車連盟)のスーパーライセンス取得に失敗した場合、ザウバーとロシア企業間の契約は実現されないと伝えている。
「それまでの間は、1,000万ユーロ(約13億円)のみが支給され、返済義務の最も差し迫った負債を清算するために充てられる」と『Welt(ヴェルト)』は報じた。
また、ザウバーへエンジンを供給しているフェラーリも、重要なカギを握っている。エンジン代1,900万ユーロ(約25億円)をまだザウバーから徴収できていないフェラーリは、来週中にザウバーが少なくとも900万ユーロ(約11億7,000万円)を支払えないようなら、F1の夏休み明け後に開催されるF1ベルギーGP(8月25日決勝)でザウバーへのエンジン供給を見合わせるとする最後通達をしたようだ。
同紙はさらに、政府とつながりのあるロシアのテクノロジー企業が、技術面に関する極秘事項を手に入れる可能性があるとして、フェラーリのエンジニアたちが警戒していると伝えた。
ザウバーのチーム代表を務めるモニシャ・カルテンボーンは27日(土)、ハンガリーで19分間に渡って記者たちからの囲み取材に応じ、ロシア企業がいまだザウバーを最終的に救済するに至っていないとの疑惑を強調してみせた。
『Speed Week(スピードウィーク)』によると、この取材後、ある記者が「政治家のような語り口だった」とポツリと述べたという。
「あれこれ話してはいたけれど、結局何が言いたかったんだろう?」
しかしながら、カルテンボーンはこの新規スポンサー契約により、自身がザウバーを離れるかもしれないとのうわさをきっぱりと否定してみせた。
「ご覧の通り、私はここにいるわ」とカルテンボーン。さらに、懐疑的な人たちへ次のようにメッセージを送った。
「わたしたちはまだ始まったばかりよ。だから、万が一、何かがうまく行かなかった場合、何をすべきかなんて考えていないの。それは単なる憶測に過ぎないから」
「それに、すべてのことがひとりのドライバー次第だなんて、誰もそんなことは言っていない」
「本当に言いたいことのすべてを伝えていないのは確かだけど、だからといってすぐ結論に飛びつくべきではないわ」
「過去のスポンサーたちとの経験から、明確にすべき事項は分かっている。ペトロナスとのときのようにね」とカルテンボーンは語った。
ザウバーがいま、いくつかの問題をやり繰りしていることは紛れもない事実だ。その対象のひとつが、ザウバーに対し不信感とともに不満を抱くフェラーリだ。にもかかわらず、フェラーリは、ザウバーと来季からF1に導入されるV6エンジン供給の契約を新たに結びたいと考えている。
また、別のうわさによると、ザウバーは、シロトキンがフェラーリの旧型車でスーパーライセンスを獲得してほしいと考えているようだ。
未回答の質問については、次回のプレスリリース内で回答すると約束したカルテンボーン。
一方で、ロシア企業と結んだ新規スポンサー契約により、従来のメキシコ企業とのスポンサー契約が見送られ、その結果チームのメキシコ人ドライバー、エステバン・グティエレス(ザウバー)のF1キャリアが幕を閉じる可能性があることに関してはきっぱりと否定した。
「あるひとつのことが、ほかへ飛び火することはない」と主張した。