ベネズエラ人F1ドライバーであるパストール・マルドナード(ウィリアムズ)は母国からばく大なサポートを受けており、支援者のなかにはベネズエラの政治関係者も含まれている。先日亡くなったベネズエラのウゴ・チャベス大統領もマルドナードを支援していたひとりだった。
マルドナードは大きな後ろ楯を失ったかに思えるが、それでもマルドナードはF1で戦い続けられるだろう、と元F1ドライバーで現在はイギリスのTV局でコメンテーターを務めるマーティン・ブランドルが語っている。
チャベス大統領と親交があったマルドナードは、政治家としてだけではなく、チャベス大統領個人から支援を受けていたと見られている。闘病の末に大統領が死去した今、マルドナードがベネズエラ国営石油会社PDVSAを通じて受けていた数百万ドル単位のスポンサー資金の今後が取り沙汰され始めた。
このスポンサー資金はマルドナードがウィリアムズのレースシートを確保するのに大きな役割を果たしたが、チャベス大統領の死去によりベネズエラでは選挙が行われるため、大統領が所属していたベネズエラ統一社会党が勢力を失う可能性もある。
この状況を、イギリス『Telegraph(テレグラフ)』の記者オリバー・ブラウンはこうつづっている。「独裁者の気まぐれな好意ばかりではなく、国内政治の行方が将来に直結している27歳とは、あまり見ない例だ」
選挙の結果次第でマルドナードの将来が決まるという意見もあるが、マルドナードにとっての状況はそれほど劇的なものではないとブランドルは考えている。
「(2012年)F1スペインGPで優勝したことで、マルドナードはベネズエラの国民的英雄になった。ベネズエラにとっても、スポンサーにとっても良い存在であるマルドナードをどうして見放すんだ?」
ベネズエラ国内政治の行方にかかわらずマルドナードへの支援は続くと見るブランドルに、元F1チャンピオンのデイモン・ヒルも同じ意見だ。しかし、ヒルは「今のこの時代、ドライバーは実力だけではだめなんだ」と、資金力がシート獲得の必須条件になりつつある現状を指摘した。
1996年のF1ワールドチャンピオンであるヒルは、F1の登竜門のひとつユーロF3に2013年からステップアップする息子ジョシュ・ヒルのために、スポンサーを探している。
『Reuters(ロイター通信)』に、ヒルは「君たちには南アメリカの企業が必要だな、実はうちも探しているんだよ。チリ、アルゼンチン、どの国でも構わないよ」と冗談を言っている。