ナレイン・カーティケヤン(HRT)は、ディフェンディングチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルが最近カーティケヤンに向けて発した批判に対して反論を行った。
レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、19日に開催されたF1アメリカGP決勝で首位を走行していたベッテルが、2位で追い上げを見せていたルイス・ハミルトン(マクラーレン)に対してのリードを失った原因としてカーティケヤンの名を挙げていた。
「ミラーをろくに見ないひとりの周回遅れのせいで、レースは不運な形で終わってしまった」とホーナーは指摘している。
ベッテルはチーム無線で、トップの座をハミルトンに奪われた際に怒りをあらわにして叫んでいた。当初、一部の関係者はベッテルがハミルトンに対して批判的であったと考えていた。
「ルイスに向けて言っていたんじゃない」とベッテルはレース後に明かし、「あれは、ルイスにとっておきのチャンスを与えた周回遅れに対してだったんだ」と続けた。
勝利を取り逃したレッドブルとベッテルは、カーティケヤンが速やかに進路を譲らなかったために、ハミルトンがベッテルを追い抜くチャンスを得たと主張している。
今シーズンの序盤にも、ベッテルはカーティケヤンのことを「キュウリ野郎」などとののしったことがあり、両者の関係に良好な過去があるとは言い難い。
そして今回、アメリカGPでまたしてもベッテルから批判を受けたカーティケヤンは「これ以上あんなくだらないことは聞いちゃいられない」と述べている。
ドイツ誌『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ ウント・シュポルト)』は、「ドライバーズ・ブリーフィングでチャーリー・ホワイティング(※1)は、特に高速が出るセクターで先頭集団に道を譲ることは不可能だって、はっきり言っていたじゃないか」というカーティケヤンの主張を掲載した。
「チャーリーは僕たちに、ターン8以降から(自分たちよりも)速いドライバーたちに道を譲るべきだと伝えてきたんだ。僕はまさにそれをやっただけだ。ベッテルもブリーフィングにいた。彼は聞いていなかったのかな?」
「彼は文句を言い過ぎるし、辛辣(しんらつ)過ぎるね」
F1でベッテルが最も親しくしている友人は、同じドイツ出身のティモ・グロック(マルシャ)だ。しかし、今回の件に関しては、グロックも周回遅れであったカーティケヤンの肩を持つようだ。
「レーシングラインの外にはタイヤのゴムかすが大量に散らばっているから、(ベッテルとカーティケヤンが接近した)あの辺の高速コーナーでは、僕らも自分のラインを運転するんだ」
「ルールでは、3回ブルーフラッグ(※2)が提示される前に、彼らを抜かせさせることになっている。それまでは大丈夫だ」
現役時代に3度F1を制したニキ・ラウダも、アメリカGPでのベッテルとカーティケヤンの一件でおかしな点は何もなかったと指摘している。
「周回遅れのクルマはいつだって、前を走っている方ではなく、追いかけている方に有利に働くものだ」とラウダは自身の見解を述べた。
※1 F1の競技委員長を務めている人物
※2 周回遅れになるクルマに対し、後続のクルマへ進路を譲るよう指示する旗