メルセデスAMGがミハエル・シューマッハに代えてルイス・ハミルトン(マクラーレン)と2013年以降の契約を結んだことについて、メルセデス・ベンツのモータースポーツ責任者ノルベルト・ハウグは、シューマッハに「長い間熟考」する時間を与えた末に決断を下したと説明した。
メルセデスAMGは2013年以降、ハミルトンとニコ・ロズベルグの組み合わせになる。だがドイツメディアは、メルセデスAMGがシューマッハを放出したことに対して批判的だ。
元F1ドライバーで現在はテレビ解説を務めているクリスチャン・ダナーは、シューマッハは「冷酷に切り捨てられた」と『DAPD通信』に対して語った。ただ、ドライバー移籍市場に出ていたのが極めて評価の高いハミルトンだったことについては、ある程度の理解を示した。
また、元F1ドライバーで現在はドイツのモータースポーツ協会DMSB会長のハンス・ヨアヒム・シュトックは『spox.com』に対し、メルセデスAMGがシューマッハを放出したと聞いて「ショックを受けた」と語った。
「ハミルトンは間違いなく最速のF1ドライバーだ。だが、ハミルトンには安定性が欠けていると思う」
「メルセデスがうまくやったとは思わない」とシュトックはチームの決定を批判している。
もうひとり、元F1ドライバーのヨッヘン・マスは『Auto Presse(オト・プリュス)』に対し、メルセデスAMGがプレスリリース1枚でシューマッハを放出したことを「ルール違反」と批判した。
しかし、ハウグはこう弁解している。「ミハエルは、長い間熟考してきている。それでも続けたいのかどうかはっきり決心がついていなかった」
メルセデスAMGにとって、43歳になるシューマッハは「プランC」だったという報道もあるが、これについて聞かれるとハウグは言葉を濁した。「ミハエルには、チームが別の選択肢を検討せざるを得ないことを伝えていた。ミハエルは常に情報を与えられていたし、それを受け入れていた」というハウグの言葉を『Die Welt(ディー・ヴェルト)』紙が紹介している。
メルセデスの親会社であるダイムラーのディーター・ツェッチェ会長も守勢にまわっている。ツェッチェは、ハミルトンと契約したのは、シューマッハの2010年以降のパフォーマンスを非難してのものではないと主張している。
しかしツェッチェは、『Bild(ビルト)』紙に対してこうも認めている。復帰に当たって、「ミハエル・シューマッハという名前を聞いて、期待が余りにも高すぎたのかもしれない」
「しかし、結論が発表された日には、ミハエルと話すために電話をした。非常にいい話し合いができた」とツェッチェは語っている。
今後シューマッハが話し合う相手は、シューマッハを2013年に乗せたいと考えているチームだ。
今のところ、ザウバー、ウィリアムズ、ロータス、さらにはフェラーリの名前まで挙がっているが、おそらくフェラーリはないとみられている。
スイスの元F1ドライバー、マルク・スレールは『Servus TV(セアヴスTV)』に対し、シューマッハがF1以前に参加していたスポーツカー選手権でザウバーに所属していたことを指摘して、ザウバーという選択には「感傷的な」意味合いがあると語ったが、金銭面で折り合いがつかないだろうと話した。
「シューマッハの報酬をまかなうのにスポンサーが必要になるだろう。それが、この選択がまとまらないだろうと考える理由だ」
一方ダナーは、シューマッハがまだグランプリを「楽しみ」たいのなら、ザウバーをねらうべきだと語っている。
だが、元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、残る選択肢がザウバーしかないのなら「辞めるべき時だ」という意見だ。
「シューマッハには、フェラーリやレッドブル、マクラーレン、メルセデスAMGだ。それ以外はどこも代わりになれない」とベルガーは『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語った。
引退後はBMWのモータースポーツ責任者やトロ・ロッソの共同オーナーを務めたベルガーは、メルセデスAMGの決断を批判していない。
「メルセデスAMGを祝福すべきだ」とベルガーは話した。「ハミルトンとロズベルグという素晴らしい組み合わせを手に入れたんだから。おそらく最高の組み合わせだろう」
「もしハミルトンを手に入れる可能性があるなら、絶対にねらうべきだ」とベルガーは主張した。
またベルガーは、ハミルトンが6年間在籍したマクラーレンを離れる決断をしたことにも理解を示した。
「たいていのドライバーは、3、4年したら環境の変化を必要とするものだ」とベルガーは述べた。ベルガー自身も、ベネトン、フェラーリ、マクラーレンを渡り歩いた経験を持つ。
「それが新たなやる気をもたらすんだ。もちろん、マクラーレンのほうがいいクルマだろう。だが、ハミルトンにとっては、自分でメルセデスAMGを一番のクルマにすることが魅力なんだ」と語っている。