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HRT代表「これまでの出来にとても満足している」

2012年08月14日(火)11:18 am

ルイス・ペレス・サラは昨年末、急きょHRT F1チームの新代表に就任した。しかし、まったく未知の世界へいきなり足を踏み入れたわけではなかった。ペレス・サラにはかつてF1ドライバーとして2シーズン戦った経験があり、それ以降も常にモータースポーツと深くかかわって来た。2012年シーズン開幕までの限られた時間内にチームを一新するプロジェクトの指揮を執り、見事にチームを変革した。シーズンの前半戦が終了したいま、ペレス・サラが代表就任からの8カ月を振り返っている。

Q:いま、シーズンのちょうど中間地点ですね。チームの前半戦をどのように評価されますか?

ペレス・サラ:これ以上ないと言っていいほど上出来だった。これまでさまざまな場面で話してきたように、チームのほぼすべてを一新したからシーズン当初のチーム状況は複雑だった。本部の引っ越しをし、4月上旬からそこをチームの拠点としている。

ペレス・サラ:これと同時進行で新しいマシンも作り上げたよ。これは私たちにとってとても大がかりな挑戦であったし、達成不可能だと思っていた。でも、非常に限られた資金の範囲内で作ることができんだ。

ペレス・サラ:新しい本拠地に落ち着いた4月、5月あたりから、チームはレースのリズムをつかみ始めた。自分たちに課したすべてを実行できたから、チームが持てる物すべてをつぎ込んだ非常に内容の濃い数カ月だったと言えると思う。

Q:一番驚いたことは何ですか? また、最も報われたと感じたことがあったら教えてください。

ペレス・サラ:正直に言って、あまり驚くようなことは起こらなかったね。というのも、先入観を持たずに取り組んでいるから、どんな局面を迎えてもそれに対処する心の準備ができているのさ。

ペレス・サラ:最も報われたと感じるのは、このプロジェクトにかかわるみんなの献身的な姿を目の当たりにしているときかな。非常に困難な時期においてもチーム全体が1つになり、最も大変な時にもこのプロジェクトを支え続けるための勇敢さ、誠実さ、そして責任感を1人1人が示してくれていた。

ペレス・サラ:十分な睡眠がとれていなかったり、数週間も家族と離れ離れになったり、あるいは決して快適とは言えない遠征続きの状態で働かなければならないとき、持てる最大限の能力を発揮することはたやすいことではないはずさ。でも、このチームのメンバーたちはそれをやってのけてくれる。本当にありがたいことだと思う。その仕事ぶりとチームへの献身によって、一部の人たちだけでなくまさしく全員が誇りを感じ、そしてこのプロジェクトの一部であることを実感することができている。

Q:前半戦に設定していた目標は達成できましたか?

ペレス・サラ:そうだね。自分たちの目標は達成できたよ。それは私たちが行った大々的な構造改革を遂行し、成長するために必要な安定性の確立に着手することにほかならない。これは控え目な目標に見られるかもしれないけれど、抜本的な改革を伴うものだった。

ペレス・サラ:2011年の終わりにかけて、本部をスペインへ移転し、107%(※1)以内に問題なく入れる能力を備えた新型マシンを製造し、なおかつ今の自分たちの立ち位置から脱却を図るという目標を定めた。そして、わたしたちは見事そのすべてを達成したのです。よって、チームは目標を成し遂げたと言えるでしょう。今、新たな目標を設定する必要があります。

Q:チームが直面した最も困難な問題は何でしたか?

ペレス・サラ:それは正しい方向性に向かって成長し続けること。クルマのパフォーマンスを改善させるために資金やスタッフをいかに効率よく使うか、これはなかなか難しい問題で、最も頭を悩ますことかもしれない。なぜなら、ほかのチームの構造はしっかりとしているけど、私たちはまだ過渡期にある。その意味でもほかのチームには私たちよりもアドバンテージがあると言えるだろう。

ペレス・サラ:しかし、私たちには限られた人員や資金しかないので、改良プラン改良の計画をとりわけ明確にしなければならない。また、改良が行われた際は、必ずそれが成果となって表れる必要がある。改善がはっきりと示されなければいけないからね。いま最も難しいことは、ほかのチームから後れをとらないようにすること。自分たちの立ち位置を見極め、進化し、これからの戦いに備えないとね。

Q:F112 (HRTの2012年型車)は完全に新しいマシンですね。どのように生み出されたんですか? クルマの性能が最大限に引き出されていると思いますか?

ペレス・サラ:F112は、生み出された過程を思えばとてもよい結果を残していると言えると思う。昨年の冬、多くの疑問が私の頭をよぎった。マシンを手にしたはいいけど、さまざまな手続きや締め切りに追われ、それをテストする時間がなかった。そこで急いで失った時間を取り戻さなければならなくなり、残された時間内でなんとか開幕に間に合わせるために、急きょ別のチームを発足させて無事こぎつけたよ。

ペレス・サラ:でも、こういった多くの障害があったにもかかわらず、クルマはよい結果を出している。マシンの基盤がしっかりしているのが最大の強みになっている。耐久性がよく信頼性が高いクルマで、開発によって格段とよくなる可能性を秘めている。現段階でクルマの潜在能力の50%が出ているといったところかな。残りの50%は主に空力面の改善で引き出せると思っている。

Q:夏休み明けに施される改良はありますか?

ペレス・サラ:シンガポールGP(9月23日決勝)に向けていくつか用意している。小さなチームだから、レースの度に小さな改良を持ち込めるだけの資金力がないのが現状でね。

ペレス・サラ:一つの改良や小さな改良のための新パーツを作る作業はばく大な費用がかかる。空力に関する研究のほかに、改良を行うためにはパーツも作成しなければいけないし。これには多くの時間が必要になる。だから、私たちはマシンに手が加えられる時にはその効果を最大限にいかす必要があるし、施される改良がよい結果をもたらすようにとても明確な方向性を持ち合わせていなければならないんだ。

Q:今シーズン、さまざまなレースにおいて天候がいかに影響を及ぼすか見てきました。天候はチームの意思決定にどの程度影響するのか、そしてレース中どのような問題を引き起こすのかお話しいただけますか?

ペレス・サラ:私たちもちょうどこの点について学んでいる最中でね。チームはまだポイント争いができる立場にはないし、レースでは周回遅れになってしまうのが現実だ。これでは自分たちのレース戦略を貫けない。

ペレス・サラ:しかし、そのおかげでよい経験を得ている。ポイント争いや順位争いに加わることができるようになるころには、レース中に正しい決断を下す準備がより整っていると思う。その時がすぐ訪れてほしいんだけどね。

ペレス・サラ:いかなる場合においてもすべてを完ぺきにコントロールすることはできない。トップチームでさえ、しばしばミスを犯しているからね。どんなときも学ぶべきことはあるよ。

Q:次にドライバーについて伺います。ペドロ・デ・ラ・ロサとナレイン・カーティケヤンが現在チームの正ドライバー、ダニ・クロスがテストドライバー、そしてマ・チンホワが開発ドライバーを務めていますね。それぞれのドライバーについてお聞かせください。

ペレス・サラ:ペドロに関しては、わたしは彼のすべてを高く評価している。彼は並はずれた人間で、非常に優れたドライバーでもある。経験に加え、彼は多くの良識を持っており、リーダーとしてチームをけん引している。彼がこのプロジェクトの中心であることに間違いない。

ペレス・サラ:ナレインは、彼の経験、安全性、そしてスピードを強調したい。それに安定感がある走りでチームに貢献していることも忘れてはならない。

ペレス・サラ:ダニは強さと野心が備わった若いドライバーで、テストドライバーという難しい立場にありながらもチームに驚くほどよくなじんでいる。

ペレス・サラ:マはとてつもない可能性を秘めており、私たちをあっと驚かせるドライバーだね。彼が7月にシルバーストンでF112をテストした時にその片鱗(へんりん)を見せた。仕事熱心だし、彼もまたすぐチームに溶け込んだ。

ペレス・サラ:各ドライバーがそれぞれの役割を完ぺきにこなしているからチームのドライバー構成をとても誇りに思っているし、満足しているよ。

Q:今シーズンが終了した時に、大成功のシーズンだったと思えるために、何が必要ですか? 

ペレス・サラ:私にとって、今のマシンにある信頼性を維持し、パフォーマンスをあと少しだけ改善できたら、うまくいったシーズンと呼べると思う。これを達成するために、夏休み後に持ち込む空力パッケージの改良が効力を発揮してくれると期待している。

ペレス・サラ:目標は予選のQ1でトップから104%から105%のタイム内におさまり、2013年シーズンの準備に入ること。これらすべてをクリアできたら、私は満足である。それに、少し時間を要するとは思うが、チームが(本拠地のある)カハ・マヒカで作業しているデザインおよび空力部門と十分に役割を果たすことを願っている。

Q:F1はコンコルド協定(※2)の再交渉や2014年の新エンジンなど、転換期にあります。F1の将来において非常に重要であるこれらの問題に対するチームの見解を教えてください。

ペレス・サラ:HRTの立場はいまのところオープンだよ。エンジンの新しいルールに関して言えば、私たちはいま、できる限りすべての情報を集めているところさ。特にこの変更が暗に意味するコスト面に関する情報を待っている。すべての詳細はまだ分からないけど、私たちにとってどのような立場をとり、どのような結論を出すのかを知るためにも、早く知る必要がある。なぜならば、このエンジンの新しいルールはチームの予算の15%から20%を占めるものだからね。この変更には、よく吟味された計画をもって対応する必要があるだろう。

ペレス・サラ:コンコルド協定に関して、何も問題となることは無いと思う。というのも、私たちは小さなチームではあるけど、きちんと考慮され、サポートしてもらっていると感じているからね。

Q:重労働が数ヶ月続きましたが、待ちに待った夏休みに入りました。何か計画はありますか?

ペレス・サラ:スペインで家族と過ごすよ。ビーチでのんびりしたり、山に行ったりする予定さ。どうやったらマシンが速くなるかなんてしばらく考えることはやめて、家族と共に過ごす時間をとても楽しみにしているよ。

(※1)予選Q1でトップから107%以内のタイムを記録できなかった場合、予選落ちとなって決勝への出場が認められないルールのこと。

(※2)F1の運営方法や収益分配などについて規定した協定。現行の協定は今年で期限が切れる。

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