レッドブル首脳のヘルムート・マルコが、今季のF1最終戦アブダビGPでマックス・フェルスタッペンがF1チャンピオンとなったのを目にしたときには、かつてセバスチャン・ベッテルがチームに初タイトルをもたらしたときよりも「はるかに強い」感激を覚えたと認めた。
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「これは、あのときよりをはるかにしのいでいるよ。もっと強烈な感情をもたらした」
テレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語った78歳のマルコは次のように付け加えた。
「最終ラップが終わった後の解放感は、本当に比べようがないほどだった」
マルコは、アブダビGP決勝でフェルスタッペンがルイス・ハミルトン(メルセデス)に大きな差をつけられていたときばかりか、実際にはアブダビに着く前から敗北を覚悟していたという。
「確かに、正直に言えば、もう終わったと思っていたよ」
「メルセデスがシーズン終盤に最高のマシンを手にしていたのは確かだったからね」
ともあれ、今季のF1最終戦が史上最も感情的かつ物議をかもす結末を迎えたレースとして歴史に刻まれることになるのは間違いないだろう。
F1関係者や、特にハミルトンやメルセデスのファンの中には、F1レースディレクターを務めるFIA(国際自動車連盟)のマイケル・マシが残り1周でレースを再スタートさせたことに疑問や不満を抱いている者も少なくないようだ。
ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)のクラッシュによりセーフティカーが導入された際、フェルスタッペンはピットインして一番軟らかいソフトタイヤに交換したものの、それまでトップを独走していたハミルトンはすでに40周以上走行したハードタイヤのままだった。そうした状況で残り1周を戦う場合、フェルスタッペンにアドバンテージがあったのは確かだ。
「セーフティカーがなければ、ルイスがチャンピオンになっていただろう。あのセーフティカーによって、マックスがチャンピオンになれたんだ」
フェルスタッペンの母国オランダの『Ziggo Sport(ジッホ・スポルト)』にそう語った2005年と2006年のF1チャンピオンである40歳のフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は、次のように続けた。
「その点では、今日は運が決めてくれたと言えるし、僕たちもそれに関しては正直であるべきだ」
「だけど、ほかの21レースを見れば、このレースもそうだけど、マックスにも多くの不運があった。だから、これは正当な結果だったのかもしれないね」
実際のところ、今季はフェルスタッペンが10勝をあげ、10回もポールポジションからスタートしたのに対し、これまで7度F1王者となったハミルトンの勝利数は8でポールポジションも5回と、戦績的にはフェルスタッペンが上回っており、その意味からもフェルスタッペンの戴冠は文句のつけようがないものだ。
しかし、アロンソが正当な結果だったと考える一方で、メルセデスは再スタート前に行われた周回遅れのマシンに対する措置がF1競技レギュレーションに違反していたと考えている。
メルセデスは上記に加え、再スタート前にフェルスタッペンがハミルトンのマシンの前に出ていたのも違反だったとして抗議を行ったが、アブダビGPのレーススチュワード(競技委員)はそれを却下している。
そして、伝えられるところによれば、メルセデスはこの件に関して正式に上訴する方針だという。
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、この件について質問されると次のように答えた。
「彼らがこういうことをしているのは、本当に誰にとってもよいことではないよ」
「しかし、彼らが我々からタイトルを奪うことはできない。誰もマックスのタイトルを奪おうとはしていないよ。しかし、我彼らが違う反応を示すことを期待するのは無理だったかもしれないね」
マルコは、自分たちの勝利を恥じる理由は何もないと次のように主張している。
「我々は高潔な勝者だ」