1970年代に活躍したドイツ出身の元F1ドライバーであるハンス-ヨアヒム・シュトゥックが、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは“タフ”なドライバーだが“ダーティ”なドライバーではないと語った。
先週末に行われた今季のF1第21戦サウジアラビアGP決勝では、フェルスタッペンがタイトル争いのライバルであるルイス・ハミルトン(メルセデス)に対してアグレッシブな攻防を見せたが、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)のF1レーススチュワード(競技委員)によって2つのペナルティを与えられてしまった。
こうしたこともあり、メディアの中にはフェルスタッペンは“ダーティ(汚い)”なドライバーだと論じているものもある。
■フェルスタッペンは汚いドライバーではないとシュトゥック
だが、70歳のシュトゥックは、今季のF1タイトルのゆくえが決することになる今週末の最終戦アブダビGP(12日決勝)を前に、フェルスタッペンがわざとハミルトンにぶつかってタイトルを自分のものにしようとする可能性があると思うかと質問されると『f1-insider.com』に次のように答えた。
「それはナンセンスだよ」
「マックスが汚いドライビングをしないことは保証できるよ。言えることは、今年はいくつかの戦略的動きがあったということだ。例えば、メキシコがそうだったし、サウジアラビアもそうだった」
「だが、私はそれが彼を非常に特別なドライバーにしているのだと思っている。並外れたドライバーにね。汚いと見えるかもしれないが、そうではない。素晴らしいドライビング、タフなドライビングなんだ」
「彼は限界を押し広げているよ」
サウジアラビアでは、フェルスタッペンが“ブレーキテスト”と呼ばれる急減速を行って後ろにいたハミルトンの走行を妨害したと見なされてペナルティを受けたわけだが、これについてどう考えるかと尋ねられたシュトゥックは次のように語っている。
「あそこで何が起こっていたのか、我々には本当のところは分からない」
「確かに、彼はブレーキを強く踏んだ。だが、普通に考えて、なぜハミルトンはその前に追い抜かなかったのだろう?」
「いずれにせよ、あれがF1タイトル争いに影響を及ぼすことはなかったから、結果としては問題なかったけれどね」
■フェルスタッペンはいじめられていると元F1ボス
フェルスタッペンを擁護しているのはシュトゥックだけではない。今年の10月末に満91歳の誕生日を迎えた元F1最高責任者のバーニー・エクレストンも、フランスの『AFP通信』に次のように語っている。
「マックスはルイスに比べれば子供だし、最悪なのは、ルイスが自分に有利になるように大規模な宣伝活動を行っていることだ」
「マックスはレースだけでなくそうしたことにも立ち向かわなくてはならないんだ。彼はいじめられているし、それはフェアなことではないよ。心理戦が繰り広げられているんだ」
「マックスも何年かレースをしてきているが、ルイスのようにこの世界に長くいるわけじゃないからね」
■ハミルトンの方がもっと狡猾だとビルヌーブ
さらに、1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブも、サウジアラビアでフェルスタッペンが行ったようなことは実はハミルトンもやってきているのだと語り、次のように付け加えている。
「ただ、ルイスがやるときは、それがわざとかどうかが常に疑わしく見えるやり方をするんだ」
「彼はその道の達人だからね」
一方、F1引退後は1990年代中盤までWEC(世界耐久選手権)など数々のカテゴリーで実績を残したシュトゥックは、今週末にフェルスタッペンがF1チャンピオンの栄冠を手にするのを見たいと思っていることを認めている。
「私はマックスとレッドブルの幸運を祈ること認めるよ。私はマックスが好きだからね」
「彼は怖じ気づいてなどいないし、彼はいいやつなんだ。それに、自動車会社を持たないチームとしてこれほどの成功を収めたレッドブルにも敬意を表さなければならない」
そう語ったシュトゥックは、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)の会長を務めるジャン・トッドの名前をあげながら、次のように付け加えた。
「私がほかに望むのは、トッド氏が彼ら2人に、アブダビではいいレースをするようにと言ってくれることだよ」