F1第18戦メキシコGP(エルマノス・ロドリゲス・サーキット)決勝レースが行われた。
●【F1第18戦メキシコGP】決勝レース結果のタイム差、周回数、ピット回数
「なんという戦いだ」という一言に尽きるかもしれない。
■荒れたオープニングラップ、角田裕毅とシューマッハが不運のリタイア
レースはいきなりオープニングラップのターン1から荒れることになった。
ポールポジションからスタートしたバルテリ・ボッタス(メルセデス)は、オープニングラップのターン1で、イン側にルイス・ハミルトン(メルセデス)、アウト側にマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)という状態で進入。
ターン1でボッタスはハミルトンに道を譲って3番手に落ちたが、ターンインしている最中にすぐ後ろのダニエル・リカルド(マクラーレン)のノーズがボッタスの右リヤタイヤと接触し、スピンしてしまった。
これで後続集団は大混乱。中団のエステバン・オコン(アルピーヌ)の左には角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)、右にはミック・シューマッハ(ハース)という状態で、ボッタスを避けたオコンは行き場を無くして、ターン2の手前で左右のドライバーと接触。オコンは走行を続けられたものの、この不運の接触で角田裕毅とミック・シューマッハは1周もすることなくリタイアとなった。
その後フェルスタッペンはハイペースで逃げる。ハミルトンは「彼は速すぎる」とお手上げ状態。これはいつもの無線戦略ではなく、タイムを見ても本当に追いつけないようだ。フェルスタッペンは順調に逃げ続け、十分なマージンを築いてレースをコントロールしていく。
■28周目、ハミルトンが早めのピットイン
ハミルトンに母国の英雄ペレスは食い下がりながら、レースは進んでいった。路面温度は47度に達し、ペースの上がらないハミルトンは「タイヤがタレてる」と不調を訴えた。
29周目、ハミルトンは上位勢の中で早めにハードタイヤに交換する戦略に出た。これでレッドブル・ホンダの1-2体制となり、観客は大歓声。
■ペレス、メキシコ人として初めてレースをリード
34周目にはトップのフェルスタッペンが余裕を持ってハードタイヤに交換し、2番手でコース復帰。ここで暫定トップはペレスとなり、観客は大興奮。メキシコ人として初めてレースをリードすることになった。
レース前、「ペレスがレースをリードし、フェルスタッペンが2番手という状況だったらどっちに勝たせるのか?」と質問されたレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表は「難しい質問だ」としながらも「チームとドライバーはチャンピオンシップを争っている」と答えており、フェルスタッペンを勝たせる戦略を優先すると答えていた。暫定とはいえ、まさにその状況になった。
■ペレス、ファステストラップを奪う
ペレスは41周目にハードタイヤに交換すると、ハミルトンの後ろ3番手でコース復帰。
42周目、ペレスはフレッシュなタイヤでペースを上げてハミルトンからファステストラップを奪った。このままフィニッシュすれば1ポイント追加で得ることができる状態だ。
もし、1位フェルスタッペン、2位ハミルトン、3位ペレスというこのままの順位でレースを終え、このままファステストラップをペレスが獲ったら、コンストラクターチャンピオンシップでメルセデスにレッドブル・ホンダが並び、優勝回数などからレッドブル・ホンダがチャンピオンシップリーダーになる状況だった。
■ボッタスの行く手を阻んだリカルド
この時点でボッタスは14番手を走行しており、10位に入れるかどうかというところで、メルセデスとしては計算しにくい状態だった。しかも、ボッタスの行く手を阻んだのが、オープニングラップで自身に接触してきたリカルドだった。ボッタスはリカルドを攻略できず、終盤まで争い続けることになる。
■ボッタスとメルセデス、執念のファステストラップ!
終盤の66周目、ボッタスは予想通りピットインしてソフトタイヤに交換。ファステストラップをペレスから奪いにいった。
ファステストラップの1ポイントは10位以内でフィニッシュしたドライバーに与えられるため、それが難しいボッタスは、レッドブル・ホンダから1ポイントは奪えたものの、自ら得ることはできない。それでもチャンピオンシップを考えれば、レッドブル・ホンダから1ポイントは奪っておきたい。
しかし、ボッタスはトラフィックに引っかかりタイム更新ならず。このままレッドブル・ホンダがファステストラップを獲るのか、と思われた。
ところが、メルセデスとボッタスは諦めなかった。なんとあと2周という70周目、もう一度ピットに入ってソフトタイヤに交換した。さらにピットであえてステイして、クリーンラップを狙う周到さだ。そして、ボッタスは最終ラップで見事1:17.774という新コースレコードタイムを叩き出し、レッドブル・ホンダから1ポイントを奪うことに成功した。
■フェルスタッペン優勝、ホンダF1は1-3-4の好結果
終盤、観客を興奮させたのは、2番手争いのハミルトンvsペレスだ。早めのタイヤ交換をしたことでペースの上がらないハミルトンに、後半までタイヤ交換を粘り、ハミルトンよりフレッシュなタイヤのペレスが迫る。その差は1秒以内のDRS圏内にまで迫った。
しかし王者ハミルトンはペースアップし、ペレスにDRSを使わせないようにその差を再び1秒以上に拡げる。
なんという戦いだ。観客の興奮度はマックスに達した。
フェルスタッペンは余裕のレース展開で優勝。そして、激しい2位争いを繰り広げたハミルトンは、観客から大歓声の後押しを受けるペレスと1秒差をキープしながら逃げ切り、チェッカーフラッグを受けた。
レッドブル・ホンダの1-2はならなかったが、ペレスはメキシコ人として初めて、F1メキシコGPの表彰台を獲得。ペレスの父親と息子“リトル・チェコ”も大喜びの様子だった。
4位には一人旅を続けたピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)が入賞したことで、ホンダはF1初優勝の思い出の地で、F1最後のメキシコGPで1位、3位、4位という好結果を残した。
■チャンピオンシップ争いも熾烈
ポールポジションからスタートしたボッタスは15位でフィニッシュしたが、最終ラップでファステストラップを獲得。レッドブル・ホンダから1ポイントを奪ったことで、コンストラクターチャンピオンシップではメルセデスが1ポイントリードしたまま終えている。
もし、ファステストラップをペレスに獲られていたら、両チームは同点になっていて、優勝回数などからレッドブル・ホンダがトップに立つことになっていた。メルセデスとボッタスの執念の走りがチャンピオンシップをさらに盛り上げることになった。
ドライバーチャンピオンシップでは、フェルスタッペンがハミルトンと19ポイント差までリードを拡大している。
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