今季のF1タイトルの行方はマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)のクラッシュによって決着がつく可能性もある。
そう指摘したのはメルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフだ。
F1史上最多記録となる通算8回目のドライバーズタイトル獲得を目指すハミルトンだが、あと5レースを残す段階でフェルスタッペンに12ポイントの差をつけられている。
今後も両者の一進一退の攻防が続くと予想されており、最終戦アブダビGP(12月12日決勝)までもつれるだろうと考えている者も多いようだ。
こうした中、ヴォルフはイギリスの『Daily Mail(デイリー・メール)』に次のように語った。
「もし、最終戦のアブダビでタイトル争いの決着がつくというシナリオになったら、そのときリードしている者は絶対にセナ-プロスト時代と同じことをしようとするだろうね」
F1の歴史の中には、ライバルにタイトルが行くのを阻止するためにわざとマシンをぶつけたという事件がいくつか起きていたのは事実だ。1980年代終盤にはマクラーレンのチームメート同士だったアイルトン・セナとアラン・プロストが、1993年にはベネトンのミハエル・シューマッハがウィリアムズのデーモン・ヒルに、そして1997年にはやはりフェラーリのシューマッハがウィリアムズのジャック・ビルヌーブにマシンをぶつけるという事件が起きている。
「シューマッハとビルヌーブでそれを目にしたし、セナとプロストは2回もあった」
そう語ったヴォルフはフェルスタッペンとハミルトンがクラッシュして両者ともにリタイアで終わった第14戦イタリアGPに言及しながら次のように続けた。
「モンツァでは何が起きていた? フェルスタッペンがルイスを押し出したのは、彼(ハミルトン)がオーバーテイクしようとしていたし、彼の方が速かったからさ。そして、それはすごくよく理解できるよ」
「もし、タイトルを争っている相手にオーバーテイクされてチャンピオンの座が遠のいていくとしたら、相手に追い越されないようにすること以外に手はないだろう」
だが、ヴォルフは、そうしたことが起こるのを避けるために自分が状況を「コントロール」するつもりはないとしている。
「それをコントロールできるとは思わないし、コントロールしたいとも思わない。なぜなら、彼らは自分のマシンに乗ったグラディエーター(剣闘士)だからね」
「それがこのスポーツを非常に興味深いものにするんだ。というのも、我々は対立を好まないという性質を持っている。そして、その関係がどのように展開するかに興味をそそられるからだ」
「もし彼らがクラッシュした場合、お互いに対立していくのか? 彼らは何と言うのか? 彼らはお互いの目を見るのか?」
「我々は干渉しない。関係は個々人の間で整理されるものだよ」
一方、今年で15年目のF1シーズンを迎えている36歳のハミルトンは、7年目のシーズンに初のF1タイトル獲得を目指している24歳のフェルスタッペンの方が、自分が2008年に初めてタイトルを獲得したときよりもいい位置にいると考えているようだ。
「彼は6年目くらいかな?」
そう語ったハミルトンは次のように付け加えた。
「僕は2年目だったよ」