ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーが、昨年限りでロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセンを放出し、その代わりにミック・シューマッハとニキータ・マゼピンの2人のルーキードライバーと契約したのは、それしかこのチームを存続させるための選択肢がなかったからだと主張した。
新型コロナウイルスによる大きな影響を受けたことで、今年のF1マシンは基本的には2020年型マシンをベースとするものとなっている。そして、ハースでは全く新しい技術レギュレーションが導入される2022年に向けたマシン開発に全力を注ぐために、2021年型マシンの開発は行わないことをシーズン当初から明言していた。
それゆえ、今年のハースにはライバルたちほどの競争力がなく、ほとんどのレースで2人のルーキードライバーがグリッド最後尾に並ぶ状態となってしまっている。
実際のところ、ハースが2021年シーズンに向けてF1経験豊かなグロージャンとマグヌッセンの2人を一気にルーキードライバーコンビに替えたことに驚いた者も少なくはなかった。
マグヌッセンの母国デンマークの『Ekstra Bladet(エクストラ・ブラデ)』から、どうしてマグヌッセンを残留させなかったのかと質問された56歳のシュタイナーは次のように答えた。
「私はチームを維持するためのチャンスを見つけなくてはならなかったんだ。多くの家族がそれに依存しているからね」
「つまり、たとえそれが嫌でも難しい決断をしなければならないこともあるんだ。怒りや不満は全くなかった。ビジネス上での判断でしかなかったよ」
「それ以外の方法では、我々はここにはいなかっただろう。そのことを理解してもらう必要がある。つまり、もしもケビンを残していたとしてもハースが生き残っていなければ、いずれにせよケビンには乗るクルマがなかったということさ」
そして、シュタイナーが見つけた解決策が、マグヌッセンとグロージャンに替えて2人の若いドライバーを走らせるというものだったわけだ。
7度F1王者となったミハエル・シューマッハの息子ミックは、ハースと技術提携契約を結んでいるフェラーリの契約下にあるドライバーであり、当然その強い支援を受けている。
そして、ロシア有数の実業家として知られるドミトリー・マゼピンを父に持つニキータはハースにタイトルスポンサーを持ち込んでいる。
シュタイナーは、今季は若いルーキードライバー2人で戦っていることから少しばかり厳しい状況となっているのは確かだが、仮にマグヌッセンとグロージャンが走っていたとしても今季のマシンには大きな不満を抱えてモチベーションを失っていたはずだと考えている。
「それもこの決定のもうひとつの理由のひとつだったんだ。不満を抱える者たちがここにいる意味はないからね」
「少なくとも、新人ドライバーはF1について学び、経験を積むことができる。経験豊富な2人のドライバーにこのようなマシンを与えれば、チームがだめになってしまう可能性もあっただろう。たとえ、彼らに金を払っていてもね」
そう語ったシュタイナーは次のように付け加えた。
「私自身もそう感じているよ。もしも2022年が来なければ、私は今シーズンに仕事をしたいとは思わなかっただろう」