2021年にタイトル争いを繰り広げることになるメルセデスとレッドブルだが、そこには「新たな戦場」が生まれてきているようだ。
2022年からのエンジン独自製造プロジェクトを展開していくことになるレッドブルだが、少し前にメルセデスのエンジン部門からベン・ホッジキンソンを引き抜き、レッドブルのエンジン部門であるレッドブル・パワートレインズのテクニカルディレクターに任命することを明らかにした。
そして、レッドブルではこのほどホッジキンソン以外にも新たに5人のエンジニアの獲得も発表したが、それらもすべてメルセデスにいた人材だ。
■レッドブルの人材引き抜きに対抗するメルセデス
こうした中、メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフ(チームCEO兼代表)は次のように語った。
「レッドブルはそのプロジェクトのために人材を必要としている」
「イギリスには彼らが目をつけるような会社はそれほど多くないし、我々から人材を引き抜こうとするのは予想していたよ」
「これは新たな戦場であり、新たな競争の場でもあるよ」
そして、レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)によると、メルセデスはその新しい戦場ですでに砲撃を開始したという。
「レッドブルにはレースへの情熱があり、チーム全体が同じベースに立っている」
『Motorsport-Magazine.com』にそう語ったマルコは次のように付け加えている。
「メルセデスは、うちに来ることになった社員をとどめるために、給料を倍にすると申し出ている。我々はこういうことはしないよ」
■ドライバーたちの反応はクール
しかし、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは、現時点でメルセデスから6名もの人材がレッドブルへ移籍するという状況になっていることは、別に驚くにはあたらないと考えているようだ。
「一つの場所に長くいると、新しいことに挑戦したくなるのは当然のことだと思うよ」
そのフェルスタッペンのコメントに付け加えてマルコも次のように語っている。
「それは普通のことだと思っている。これだけ長きにわたって圧倒的な強さを誇ってきたチームであれば、当然、そのようなスタッフを確保しようとするだろう」
ところが、メルセデス所属の現F1チャンピオンであるルイス・ハミルトンも、このことに関しては別に大騒ぎするほどのことはないと次のように語っている。
「僕たちはものすごく巨大なチームなんだ。だから、1人の人物に、あるいは5人かもしれないけれど、それほど頼ってはいないよ」
■フェルスタッペンのレッドブル残留が濃厚に?
一方で、最近の状況を受けて、フェルスタッペンがレッドブルにとどまる可能性が高まっていることも事実のようだ。少し前には2022年にメルセデスへ移籍することを考えているのではないかと噂されていたフェルスタッペンはこのほど次のように語った。
「僕たちはすごくワクワクするような未来を迎えようとしているし、当然僕もそこにいたいし、その行く末を見守りたいと思うよ」
■バジェットキャップ問題でも意見の相違
一方、現在メルセデスとレッドブルの関係が緊迫したものになってきているのはエンジン問題だけではなさそうだ。
メルセデスは、将来的にバジェットキャップ(チーム予算上限)に違反した場合、競技面においてペナルティを適用することを望んでいる。だが、レッドブルとフェラーリはその提案にすぐに賛成するつもりはないようだと伝えられている。
マルコはこの件に関して次のように語った。
「投票を行う前にもっと詳細を知りたいと思っている」
同時に、レッドブルでは新たなバジェットキャップではエンジンコストをもっと小さくするべきだと主張している。
「1億ドル(約110億円)を大きく下回るべきだよ」とマルコは語っている。