デンマーク出身の元レーシングドライバーであるジェイソン・ワットは、セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は今年限りでF1から姿を消すことになるかもしれないと考えている。
●【F1第1戦バーレーンGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
レッドブルで2010年から4年連続でF1王者となったドイツ出身のベッテルだが、昨年限りでフェラーリのシートを失い、今年はアストンマーティンで新たなシーズンに臨んでいる。
しかし、バーレーンでのプレシーズンテストで思うような走りができなかったベッテルは先週末に行われた開幕戦も非常にみじめな結果に終わってしまった。
予選Q1を18番手で敗退したベッテルだが、その時に黄旗を無視したと判定されて5グリッド降格ペナルティを受け、決勝は最後尾グリッドからのスタートとなってしまった。
さらに、決勝ではエステバン・オコン(アルピーヌ)に追突するミスを犯し、このレースだけで合計5点のペナルティポイントを受けてしまっている。
一方、チームメートのランス・ストロールは予選Q3に進出。決勝でも10位入賞を果たしてチームに1ポイントを持ち帰っており、少なくともアストンマーティン2021年型マシンにはそのレベルで戦う力があることを示している。
こうした中、イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』が、ベッテルにとってバーレーンは「悪夢のスタート」となったと報じるなど、メディアによるベッテルの評価は昨年よりさらに悪化しつつあるようだ。
だが、アストンマーティンのチーム代表を務めるオットマー・サフナウアーは次のように語り、33歳のベッテルを擁護している。
「クルマは彼が以前運転していたものとはまったく別物なんだ。哲学もパワートレインもね」
「セバスチャンはまだほんの数日しか我々とは一緒にやっていない。彼はテストでは距離を伸ばすことができなかったし、まだクルマに慣れようとしているところなんだ。しかし、私はそのうち彼が最高のレベルに戻ることを疑っていないよ」
「結論を急ぐ必要などないよ。1レースやっただけだからね」
「確かに、最高のレースではなかった。だが、前向きなこともある。彼のラップタイムはこれまで我々のところでかなりの時間を費やしてきたランス・ストロールと似たようなものだったし、非常に競争力を示した時も何度かあったんだ」
「もちろん、私は前回のレースについてセバスチャンと話をすることにしている。だが、結論を導き出すにはまだ早すぎるよ」
しかし、ベッテルと同じドイツ出身の元F1ドライバーであるラルフ・シューマッハは、ベッテルがつまらないミスを何度も犯したことが気にかかっているようだ。
ラルフ・シューマッハは、とりわけレース中にオコンに追突した事故はひどいものだったと『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』に次のように語った。
「一番気になるのはその対処の仕方だよ。彼はオコンに突っ込んだ時、すぐに無線でオコンがラインを変えたのだと訴えていた」
「だが、録画を見れば、あれはベッテルのミスだったことが100パーセント明らかだ」
「レース後に彼はオコンに謝っていたが、どうしてセバスチャンがこういうミスを繰り返すのかという疑問が残る」
「彼ほどの経験があるのなら、そのような状況をより的確に判断できるはずなんだ。だから彼は自問する必要があるよ」
「現時点ではアストンマーティンのムードのことを気にかける必要はないと思っている。協力関係はまだ始まったばかりだからね。だが、これからもああいうことが起きれば、どこかの時点でひっくり返る可能性はあるよ」
しかし、かつて国際F3000シリーズなどで走った経験を持つワットはすでに結論を導き出しているようだ。
ワットはベッテルについて母国デンマークの『Ekstra Bladet(エクストラ・ブラデ)』に次のように語った。
「彼は恐らく今年立ち直れると期待していたのだろう。しかし、私はベッテルはもう時間切れだと思っている」
「彼が以前のようなレベルに戻ることは決してないだろう。残念だが、彼はこの2年か3年の間、何も結果を残せていないことを指摘しなければならない」
「非常に大きなダウンフォースを持つレッドブルにいた昔の彼は良かった。しかし、それ以降は一気に下り坂だ。彼は愚かなミスを犯すが、それは彼のプレッシャーの表れだ」
そう語った51歳のワットは次のように付け加えた。
「私に言わせれば、2022年に彼がグリッドにいることはないだろうね」