今年1月にF1の新CEOに就任したステファノ・ドメニカリが、F1には「人種差別問題」はないと主張した。
昨年、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が人種差別に抗議するためにF1決勝レースが行われる前にサーキット上でドライバーたちに「ひざまずく」よう求めた。実際にひざまずくかどうかはドライバー個々の判断に委ねられたものの、F1ではそのための時間を公式に設けていた。
だが、2014年シーズン序盤までフェラーリのチーム代表を務めていたことでも知られるドメニカリは、2021年シーズンにはそれをF1の公式行事としてプログラムに組み込むことはないだろうと示唆している。
「膝をつくことや膝を立てることの意味は世界のどこでも同じというわけではない」
『Daily Mail(デイリー・メール)』にそう語ったドメニカリは次のように続けた。
「ドライバーたちと膝を交えて話し合いたいと思っている。ひとつのしぐさに焦点を合わせたいとは思わないからね」
「レースの前には大きな舞台があるものの、我々はそれを政治的な形で最大限に利用することを望んではいない。我々は世界にとって、そしてF1にとって重要な価値を強調したいんだ」
2020年に通算7回目となるF1ドライバーズタイトル獲得に成功したハミルトンだが、「我々のスポーツや世界には不公平さが残っている」と主張している。だが、ドメニカリはF1には人種差別問題はないと考えている。
「私はそうは考えていないよ」とドメニカリ。
「少なくとも、私の個人的な経験からはそうは思えない。実際はそれとは逆だよ。F1はヨーロッパという特定の地域で始まったものだが、ほかの地域にも進出しているし、多文化主義が育ってきているんだ」
昨年までF1最高責任者を務めていたチェイス・キャリーの後任としてF1を率いる立場に就いたドメニカリだが、キャリーはかつてF1最高権威の座にあったバーニー・エクレストンの影響を極力排除しようとしていたことが知られている。
実際のところ、キャリーはエクレストンにパドックパスを交付することをせず、レース現場からも締め出していたほどだ。
しかし、ドメニカリは今も「ほとんど毎週のように」90歳のエクレストンと話をしているという。
「バーニーとはうまくやっているよ。アドバイスが必要なときは言ってくれと言われているんだ。残念だが、バーニーがいなかったら今日のF1はなかっただろう」
「忘れてはならないのは、彼はサーキットで走るクルマによってチャンスが生まれることを理解し、正しい情熱、構造、ビジネスを構築した先駆者だということだよ」
そう語った55歳のドメニカリは次のように付け加えた。
「私は、彼と彼が成し遂げたことについて非常に敬服している。彼のパドックパスは準備できているし、彼がレースに来られることを期待しているよ」