F1第3戦ハンガリーGPが2020年7月19日(日)3日目を迎え、ハンガリーの首都ブダペスト郊外にあるハンガロリンク(1周4.381Km)で決勝レースが行われた。
●【決勝レース結果】2020年F1第3戦ハンガリーGP決勝レースのタイム差、周回数
■レース直前にフェルスタッペンがクラッシュ!
レース開始2時間前に雨が降りだし、ウェットへのセットアップ変更が許可された。
レース開始30分前には雨は上がったものの、路面はウェット。各車は浅溝のインターミディエイト(グリーン)を履いてピットからグリッドへと向かった。
その中、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がターン12でフロントタイヤをロックさせてしまい、左フロントタイヤからタイヤバリアにクラッシュしてしまうというドラマが起こった。
フェルスタッペンは左フロントサスペンションを壊し、フロントウイングを落としたままなんとかホームストレートに到着。自分のグリッドまでメカニックに押されて到着すると、メカニックはグリッド上で急いでサスペンションとノーズを交換する。パーツを交換してさらにセットアップも調整しなければならない。
制限時間はスタート5分前まで。もし間に合わない場合は、ピットレーンに戻されてしまう。
変更作業締切時間まであと3分。ブレーキパーツが組み上げられていく。時間内に間に合うのか?
残り1分というところでノーズも着けられた。残り30秒でやっとタイヤが装着された。制限時間ギリギリまで最終チェックをし、無事グリッドからスタートできることになった。
コクピットに戻ったフェルスタッペンは、「信じられない作業だ。みんなありがとう」とチームに感謝を伝えた。
■決勝レース
レース前の天候はくもり、気温21℃、路面温度28℃。路面は乾いてきている場所はあるものの、雨予報も出ており、各チームはドライでいくのかウェットでいくのか、空を見ながらのレースになりそうだ。
ケビン・マグヌッセン(ハース)のみがウェットタイヤ(ブルー)、19台はインターミディエイト(グリーン)でフォーメーションラップに入った。その最中、ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)は「ドライタイヤに変えたい」と伝えるが交換はしなかった。
各車がスターティング・グリッドに着く中、ハース2台がピットイン。ドライのミディアムタイヤ(イエロー)に交換というギャンブルに出た。
荒れた展開が予想される中、レースはスタート!ルイス・ハミルトン(メルセデス)が1位でターン1を抜けるが、2番グリッドのバルテリ・ボッタス(メルセデス)と4番グリッドのセルジオ・ペレス(レーシングポイント)は大きく出遅れた。7番手スタートのフェルスタッペンはフェラーリ勢を含め一気に4台をパスして3位へ浮上。後方でも順位が激しく入れ替わった。
オープニングラップが終わる前にクビアトがピットインしてソフトタイヤ(レッド)に交換した。
2周目、シャルル・ルクレール(フェラーリ)はソフトタイヤに交換、ボッタスはミディアムタイヤに交換した。チームは雨が降るかどうかわからない中、インターミディエイトで2台ともコース上に留まるより、1台はドライタイヤに変えてしまい、どちらでも優位に立てるようにしておこうという戦略だ。
その後、3周目と4周目に全車がドライタイヤへ交換した。このあとの雨も予想し、ソフトタイヤ、ミディアムタイヤと戦略が分かれた。
4周目、ピットレーンでニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)とカルロス・サインツ(マクラーレン)が接触。ラティフィは左リアタイヤがパンクし、1コーナーでスピン。ラティフィにはアンセーフリリースとして5秒加算ペナルティーが出される。
また、キミ・ライコネン(アルファロメオ)も本来のグリッド外からスタートしたということで5秒加算ペナルティーが出された。ハース2台がグリッドに着かなかったことがミスに繋がったと思われる。
コース上では激しいバトルが繰り広げられる中、トップのルイス・ハミルトン(メルセデス)がファステストラップを更新しながらフェルスタッペンとの差を広げる。
10周経過してのトップ5は、ハミルトン、フェルスタッペン、マグヌッセン、ストロール、グロージャン。ハース2台はギャンブルが成功した。
国際映像はたびたび雨雲レーダーを映し出し、各チームも無線で「12分後に雨が降る」など降雨を注意深く見守っており、タイヤをどう使うかエンジニアが知恵を絞り戦略を決めていった。
17周目、ガスリーがピットイン。マシンからは白い煙が出ておりマシンを降りた。リタイア第1号となった。どうもガスリーばかりにPUのトラブルが起きてしまうようだ。
コース上ではフェラーリの2台の間に割って入ってアルボンが走行中だ。アルボンはインから、アウトから抜きにかかるが、なかなかシャルル・ルクレール(フェラーリ)を攻略できず「もっとパワーを与えて」と無線で訴える。そして18周目、1コーナーでインからやっとオーバーテイクに成功した。その後ルクレールはベッテルにも抜かれ、レーシングポイントとも争っていると「もう限界だよ」と履いているソフトタイヤ交換を訴える。
各チームは雨が降ることを考慮しながらできるだけ今のタイヤで長く走らせたいが、各車タイヤ性能も限界を迎えており、たまらずピットインしてドライタイヤへと交換していく。いつ雨は降るのだろうか?
ハミルトンが無線で「雨がポツポツきたよ」という場面もあり、カメラにも水滴が付いていたが、それ以上雨が強くなることはなく、結局全車ドライタイヤのままレースを続けた。
レース後半、ボッタスがフェルスタッペンに迫ったが、フェルスタッペンもDRSが使える1秒以内には入れさせない。その後、ボッタスはタイムが落ちていく。周回遅れをパスする際に手間取ったかに思われたが、どうやらミディアムタイヤの限界だったようだ。その後ハードタイヤに交換。これでフェルスタッペンの2位は安泰かに思われた。
しかし、ハードタイヤに交換したボッタスは、ファステストラップ連発で再びフェルスタッペンとの差を縮める。このペースだと終盤に追いつく計算だ。
残り7周、メルセデスのピットはタイヤを準備するが、やめる。ハミルトンがファステストラップ狙いで中古のソフトタイヤで走らせようとするが、何周保つのかわからないためギリギリまで待った。
残り3周、ハミルトンが丁寧にピットレーンに入り、やはり丁寧にタイヤ交換を行いコースに戻った。
そしてチェッカーフラッグが振られる。優勝はポールポジションからスタートしたハミルトン。通算86勝目。同一サーキットで8勝目を挙げ、ミハエル・シューマッハの記録(フランスGPで8勝)に並んだ。1:16.627のファステストラップも更新し、1ポイントも追加で獲得した。
2位争いは最後まで激しいバトルが繰り広げられた。逃げるフェルスタッペン、負うボッタス。ボッタスはついにDRS圏内に入ってホームストレートで一気にフェルスタッペンに近づく。最終ラップでフェルスタッペンも全力で逃げ、2位でチェッカーフラッグを受けた。
トップ10順位は、1位ハミルトン、2位フェルスタッペン、3位ボッタス、4位ストロール、5位アルボン、6位ベッテル、7位ペレス、8位リカルド、9位マグヌッセン、10位サインツだった。
心配された雨だが、結局、レースに影響を与えるほどの雨は降らなかった。
これで3連戦も終了。やっと全員自宅へ帰れる。来週末はお休みとなり、次の3連戦は、2週間後からイギリスGPが2週連続開催、その翌週にはスペインGPが控えている。ハンガリーGPとは違う高速バトルに注目だ。