今年でルノーとの契約が満期を迎えるニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)にとって、ホームレースだったF1ドイツGPでのクラッシュは、“タイミングの悪い”ものとなってしまったようだ。
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先週末にホッケンハイムリンクで開催されたドイツGP決勝を9番グリッドからスタートした31歳のヒュルケンベルグは、セーフティカーが何度も導入される荒れた展開となったレースでチャンスをつかみ、一時はF1キャリア初の表彰台を狙える位置を走行していた。
だが、ヒュルケンベルグも64周に短縮されたレースが40周目に入ったところでコースアウトしてしまい、まるでスケートリンクのような状態となったランオフエリアを突っ切ってコース左側のウォールにクラッシュ。そこでレースを終えてしまっていた。
「心理的なものが原因となっていたのかもしれない。だが、あれほどいろんなことが起きていたわけだし、彼を責めることはできないよ」
今年のドイツGPで169戦目のF1レースを戦ったヒュルケンベルグは、そのF1ドライバーとしての実力は高く評価されているものの、現在一度も表彰台に上ったことがないドライバーとしてのレース出走記録を更新中だ。
ルノーF1チームを率いるシリル・アビテブール(マネジングディレクター)は、母国フランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』からヒュルケンベルグのクラッシュについて質問を受けると、そのときは自分やほかのチームメンバーの目には「涙さえ浮かんだ」と語り、次のように続けた。
「正直に言うが、今回のクラッシュは今後に向けた重要な話し合いを行うタイミングで起きてしまった。我々は自分たちにある選択権を行使するかどうかを考えているところだし、彼もそれは分かっている。これ(クラッシュ)が何らかの影響を及ぼす可能性はあるよ」
「ニコはすでに我々と一緒に3年を過ごしてきたし、人間的かつ感情的な要素もからんでくるがね」
とは言え、現時点ではルノーがドライバーたちにいいF1マシンを与えることができていないのも事実だ。
「我々のクルマの空力は期待していたレベルには全く到達していないよ」とアビテブールも認めている。
最近のうわさではルノーが来季に向けて、現在メルセデスのリザーブドライバーを務めているエステバン・オコンの起用を検討しているようだとも言われている。
オコンはメルセデスとの契約下にあるものの、2016年にはルノーの控えドライバーを務めていたこともある。メルセデスではもしオコンがシートを得られるのであれば自分たちの契約は解除してもよいと示唆しており、ヒュルケンベルグとしてもうかうかしていられない状況を迎えているのは間違いないだろう。
ドイツGPではダニエル・リカルドがエンジントラブルで、そしてヒュルケンベルグがクラッシュでいずれもリタイアに終わったが、ダブル入賞を果たしたトロロッソ・ホンダがコンストラクターズランキングでルノーに入れ替わって5番手に浮上。ルノーは3ポイント差の6番手に下がってしまっている。
さらに、今週末にF1ハンガリーGPが行われるブダペストに向けて機材を輸送中だったトラックが事故を起こすなど、最近のルノーには“不運”がつきまとっているようだ。
そうした中、ルノーのF1プロジェクトを受け持っているルノー・スポールは、2017年からチームの特別アドバイザーを務めていた元F1ドライバーのアラン・プロストを非常勤取締役に指名したことを明らかにしている。
現役時代に4度F1チャンピオンとなった実績を持つプロストは、今後ルノーにおいて5月に亡くなったニキ・ラウダがメルセデスで非常勤会長として担っていたのと同じような役割を演じることになると考えられている。