メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)が、F1オーストリアGPが行われたレッドブルリンクでは自分たちの「アキレスの踵(かかと)」が明らかになったと認めた。
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このレースを予選・決勝ともに3番手で終えたバルテリ・ボッタス(メルセデス)は、ここでは予想以上の苦戦を強いられたとレース後に次のように語っている。
「僕たちにとって難しいレースになるのは分かっていたんだ。最終的には予想以上に悪い結果だったよ」
今季は第8戦フランスGPまで開幕から8連勝を飾っていたメルセデスだが、ついにオーストリアでその記録が途切れてしまい、今季6勝をあげ一度も3位以下になったことがなかった現F1チャンピオンのルイス・ハミルトンは表彰台すら逃すという最悪の結果に終わってしまった。
■メルセデスF1マシンの弱点は「冷却」
ヴォルフは、その原因は気温が高くなったことでメルセデスF1マシンがオーバーヒートの問題を抱えていたのだと認め、次のように語った。
「すでにできる限りボディワークを開けていたんだ。温度を下げるために残されていた方法はアクセルを緩めて惰性で走ることだった」
「シャシーの冷却に問題を抱えていたのは分かっていたし、それが我々のアキレスの踵(弱点)だよ。だが、負けたときこそ、それが学ぶための最高の手段になるんだ」
ハミルトンもオーバーヒートを避けるためにあれほどスピードを落とさなくてはならなかったのには驚いたと語り、次のように続けた。
「ほかのみんなはレースを通じてフルスピードで走っていたし、F1は常にそうでなくてはならない」
「幸運なことに、ほかにはこれほど暑いレースはあまりないよ。ハンガリーかメキシコくらいかな」
しかし、フランスのテレビ局『Canal Plus(カナル・プリュ)』は、ヴォルフは第11戦ドイツGPが開催されるホッケンハイムでも同じような問題を抱える可能性があると語ったと報じている。
■自分たちは負けたが見応えのあるレースだった
そのヴォルフはさらに、今回の敗戦は残念だが、オーストリアGPはF1にとってはいいレースとなったと次のように語っている。
「少なくとも、私はピレリによくやったと言いたいよ。タイヤに関してはさまざまな意見があったが、素晴らしい2人の若いドライバーたちが最終ラップまで戦い続けたんだからね」
「しかし、私は心の中で動揺していたよ。我々はここで攻撃できないばかりか防御すらできなかったからだ」
「我々はクルマを冷却する必要があるときには400mもの間アクセルを緩めて惰性走行するしかなかったんだ。それではただ回っているだけで、レースとは言えないよ」
「でも、我々にとってはいい日ではなかったが、F1にとってはいい日になったね」
「サッカーでもいい試合もあれば悪い試合もあるように、ポール・リカール(第8戦フランスGP)は見応えのあるレースをするにはあまりいいレイアウトのサーキットではなかった。だがシュピールベルク(レッドブルリンク)でそれを埋め合わせることができた」
■これからも厳しいシーズンが続くとフェラーリのボス
ともあれ、オーストリアGPを最も大きな失望とともに終えたのはシャルル・ルクレール(フェラーリ)だろう。第2戦バーレーンGPでポール・トゥ・ウィン達成まであとわずかというところでマシントラブルに泣いたルクレールだったが、先週末のレッドブルリンクでもレースが終盤を迎えるまではF1初勝利達成がほぼ確実だと誰もが考えていた。
しかし、レースが残り3周となったところでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)にオーバーテイクを許したルクレールはまたしても優勝のチャンスを逃してしまった。
チームとしても今季初優勝を逃してしまったフェラーリだが、チーム代表のマッティア・ビノットも大きなチャンスを逃したのは残念だと次のように語っている。
「すべてのサーキットでああいう戦いが我々にできるだろうか? 私はそうは思わない」
「これからも我々にとっては苦しい戦いとなるだろうサーキットがいくつもある。しかし、我々はここでいくつかの新しいパーツを投入し、それがうまく機能していた。今後も常に新しいパーツを準備し続けていくよ」