現在ライバルのメルセデスに大きな差をつけられているフェラーリだが、今シーズン中にF1マシンの空力コンセプトを変更することはないようだ。
昨年とは大きく変わる空力レギュレーションが導入された2019年シーズンだが、開幕前に行われたプレシーズンテストではフェラーリが速さを見せ、ついにメルセデスからF1タイトルを奪い取るのではないかと考えられていた。
だが、実際にシーズンが開幕してみれば、フェラーリは1勝もあげることができず、ここまで8戦連続でメルセデスが勝利を収めるという圧倒的な強さを見せている。
こうした状況を受け、フェラーリもメルセデスの空力コンセプトを模倣した改良マシン製造に着手するのではないかと考えているF1関係者もいるようだ。
■数か月を要する空力コンセプト変更
だが、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、フェラーリの内部関係者からの情報として、今シーズン中に空力コンセプトを変える計画はなく、それは2020年シーズンに向けたプロジェクトの一環として取り組まれていると報じている。
その記事の中で、メルセデスのあるエンジニアは次のように語っている。
「シーズンが始まる前には、我々はフェラーリの方がよりよいコンセプトを導入したのではないかと自問していた」
「だが、もし我々が空力コンセプトを変えることにしていたら、それには4か月を要していただろう」
■フェラーリに残された対応策は?
実際のところ、フェラーリでは現在の状況を改善するために決勝に向けたセットアップのやり方を変えることに取り組んでいるだけだと考えられている。それによって現在有しているストレートでのスピードというアドバンテージを失ってでも、コーナーでのダウンフォースを増そうということのようだ。
現在すでにトップのルイス・ハミルトン(メルセデス)に76ポイント差をつけられてドライバーズランキング3番手に位置しているセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)は次のように語っている。
「結局のところ、僕たちはもっとダウンフォースを得なくてはならないんだ。そうすれば僕たちもタイヤをもっとうまく使うことができる」
■ハミルトンは僕たちと遊んでいるだけだとベッテル
ベッテルは、フェラーリが何らかの解決策を見つけてメルセデスと戦えるようにならない限り、現在のギャップを埋めることはまず不可能だと考えている。
先週末にポール・リカール・サーキットで行われたフランスGP決勝で終盤にファステストラップを刻んで1ポイントのボーナスを手にしたベッテルは次のように続けた。
「僕はファステストラップを刻むために最大のリスクをとったよ」
「だけど、ハミルトンは摩耗し、ブリスターを抱えたタイヤで同じようなラップタイムを出してみせた」
「もう自分たちを甘やかせてはならないよ。ルイスは僕たちと遊んでいるんだ」
■オーストリアGPでフェラーリに勝機は?
今週末に次戦F1オーストリアGP(30日決勝)が開催されるレッドブルリンクはパワーサーキットとして知られており、フェラーリにとっては有利なサーキットになると考えられている。
だが、ベッテルはそれでもメルセデスに勝つのは難しいかもしれないと、次のようなジョークで締めくくっている。
「僕たちは昔のエステルライヒリンクで走るべきじゃないかな。そうすればコーナーはそれほど多くないからね」
ベッテルが言及したエステルライヒリンクとは1970年から1987年までオーストリアGPが開催されていたサーキットであり、低速コーナーがほとんどない1周約6kmに及ぶ高速サーキットとして知られていた。
エステルライヒリンクはその後1周4.326kmに短縮され、名称もA1リンクと改称されて1997年から2003年までオーストリアGPを開催。その後世界的エナジー飲料メーカーであるレッドブルがサーキットを買収し、新たにレッドブルリンクと名前を変えて現在に至っている。