先週末に行われたF1第6戦モナコGPでついにメルセデスの連続1-2フィニッシュが途切れてしまった。
●【決勝レース結果】2019年F1第6戦モナコGP 決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
ルイス・ハミルトンが今季4勝目をあげてメルセデスの開幕6連勝は達成されたものの、フェラーリのセバスチャン・ベッテルが今季初めて2位に食い込んだためだ。
とは言え、ベッテルが2位になれたのは決してフェラーリのパフォーマンスが向上してきたことを意味するものではなかった。
■ベッテルの2位は実力にあらず
レース序盤に2番手3番手を走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がピットレーンで交錯。これで右側のウォールにタイヤをヒットさせたボッタスが余分なタイヤ交換を強いられたために4番手に後退。さらにその原因を作ったフェルスタッペンにタイムペナルティーが科されてレース後に順位を下げたことから、予選4番手だったベッテルが幸運な2位を手に入れていたのだ。
■チームの判断ミスに泣いたルクレール
さらに、フェラーリには予選Q1で担当エンジニアが路面の改善状態を読み違えたことでシャルル・ルクレールがQ1敗退となる“事件”も発生。これによって15番グリッドからレースをスタートすることになったルクレールはかなりアグレッシブに順位アップを狙っていくが、それが裏目に出てニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)とクラッシュし、それが原因でレースをリタイアしている。
イタリアのメディアは、とりわけルクレールに起きたQ1での判断ミスは許されるものではないと弾劾している。
「フェラーリでこういうことが起きてはならない」
そう書いた『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』は次のように付け加えている。
「100人ものエンジニアたちがコンピューターの前にいるのにこういうことが起きてはならない。しかし、恐らく彼らはコンピューターオタクのような考え方をしており、人間としてレースをしていないのだろう」
■フェラーリがエンジニアの配置換えに着手との情報も
2016年のF1チャンピオンであるニコ・ロズベルグは、フェラーリがたびたびレース戦略を誤ることもあるためか、モナコでの一件を受けてエンジニアの「配置換えを行うべきだ」と語っている。
フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットはそういう必要はないと主張しているものの、伝えられるところによれば、フェラーリ内部ではすでに数名のエンジニアが降格となるなどの人事措置がとられているという。
また、フェラーリ会長のジョン・エルカーンと社長のルイス・カミレリは、今季の後れを取り戻すためにさらに開発予算を上乗せすることを許可したとも伝えられている。
■ルクレールとチームの関係にも変化が?
一方、モナコGP終了後には、フェラーリがさらに深刻なトラブルを抱えてしまったようだとのうわさもささやかれ始めている。それはルクレールのマネジメントチームとフェラーリとの関係が非常に悪化してきているというのだ。
ビノットは、後方グリッドからスタートしたルクレールが無理をしすぎてしまったのだとレース後に語っていた。だが、イタリアの『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』は、ホームレースに臨んでいたモナコ出身のルクレールが、チームのミスによってQ1敗退に追い込まれたこともあって「怒りを抱えながらレースをしていたことは当然のことだ」とし、次のように続けている。
「フェラーリにとって、今年の選手権はもう終わってしまった。全てが退屈な物語にすぎない」
「我々には将来に向けた計画が必要であり、ルクレールのやる気、知性、技術をあてにするしかない」
■今後も頑張るだけだとルクレール
一方、チームとの関係悪化がうわさされているルクレールだが、ホームレースを失望のうちに終えたことに対して今後どのように対応していくつもりかと尋ねられると次のように答えている。
「前進あるのみだよ」
「起こってしまったことは変えられない。だからそのことを考え続けても意味はないよ」
「僕たちには、次の週末にはもっとよくなるという自信を持って頑張り続けることが必要なんだ」
■フェラーリはそのうち反撃に出るとトッド
2007年シーズンまでフェラーリのチーム代表を務めていた現FIA(国際自動車連盟)会長のジャン・トッドは、フェラーリはそのうち必ず反撃に転ずるはずだと考えている。
「あのチームは非常に強いし、クルマにも競争力がある」
『RAI』(イタリア放送協会)にそう語ったトッドは次のように付け加えた。
「多分、レシピに少しばかり塩とコショウが足りていないんだろうね。だが、彼らはきっとうまくやるはずだよ」