先週末に行われた今季のF1第3戦中国GP決勝では、レッドブルのダニエル・リカルドがまさに“有言実行”の果敢なオーバーテイク(追い抜き)を披露し、今季初優勝を達成した。
●【画像:レース結果】2018年F1第3戦中国GPのタイム差、周回数、ピット回数
■ボッタスの姿勢を批判していたリカルド
中国GPを迎える前、リカルドはその1週間前に行われた第2戦バーレーンGP決勝でのバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)の姿勢に批判的なコメントを行っていた。
バーレーンでの決勝では当初2回ストップ作戦をとろうとしていたフェラーリのセバスチャン・ベッテルが、メルセデス勢が1回ストップ作戦をとったことで急きょ自分も1回ストップに切り替え、2番手を走行していたボッタスよりも不利なタイヤで最後まで走り切ることを決断。
だが、タイヤのアドバンテージを持つボッタスが最終的にはベッテルをとらえるのではないかと誰もが考えていたし、ベッテル本人もメルセデスからチェックメート(王手)をかけられたと思ったと後に語っていた。
しかし、ボッタスは最後までベッテルを抜きあぐね、ベッテルが開幕戦に続いてバーレーンでも2連勝を達成していた。
バーレーンGP決勝ではスタート直後に電気系トラブルが発生し、わずか1周でレースを終えていたリカルドは、決勝が終盤に差し掛かるころにはすでにホテルに戻ってそこでレース中継を見ていたのだという。
中国GPが開催される上海に入ったリカルドは、そのときのことを思い出しながら『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語っていた。
「僕はセブ(ベッテルの愛称)が勝とうがバルテリが勝とうがどちらでもかまわなかったんだ。だけど、レースを見ていたとき、何かワクワクするようなことが起きることを期待していたよ」
「だから、僕はバルテリに向かって“行け、行け、行け!”と言っていたよ。彼(ベッテル)を攻撃しろとね。それこそファンが見たいと思っているものなんだ。だけど、それは起きなかった」
「僕なら2位では満足できなかっただろうね。とりわけ、あんなふうに勝利に手が届くところにいたわけだからね。僕なら違ったよ」
■中国GPでは華麗なオーバーテイクを披露
そう語っていたリカルドだが、中国GPのフリー走行3回目ではエンジントラブルを抱え、予選前にエンジンコンポーネントをそっくり載せ換えて予選に臨むという事態を迎えてしまっていた。
予選でトップ3チームのドライバーの中では一番下の6番手となったリカルドだったが、レースが後半に入ったところでトロロッソ・ホンダの2台が同士打ちし、コース上に破片をまき散らすというアクシデントが発生したチャンスを逃さずピットに戻り、新品のソフトタイヤに交換する。
この作戦が功を奏し、コースに戻ったリカルドはフェラーリのキミ・ライコネン、メルセデスのルイス・ハミルトンらを追い抜くと、レースの残り周回数が10周になろうかとするところでトップを走行していたボッタスに追いつくと、ここでも切れ味するどいオーバーテイクを披露。トップに立ったリカルドはボッタスに大きな差をつけて先頭でチェッカーを受けた。
■リカルドは“F1の魔術師”
レース後の表彰式でおなじみの“シューイ”を披露したリカルドは、「僕は退屈なレースで勝利することはないみたいだね」と語っている。
近年のF1ではオーバーテイクが減ったと言われており、事実ライバルのクルマの後ろにまで詰め寄ってもなかなか追い抜けないことも少なくない。
だが、少なくとも今回の中国GPは、意志と技術さえあれば十分にオーバーテイクすることは可能だとリカルドが身を持って示したレースだったとも言えるだろう。
レース前にバーレーンでのボッタスの姿勢を批判したリカルドがまさに有言実行してみせたわけだ。当然ながら、リカルドはファンによる投票で“ドライバー・オブ・ザ・デー”にも選出されている。
そしてさまざまなメディアがリカルドを“F1の魔術師”あるいは“最高のオーバーテイカー”だとほめたたえている。