今季も開幕戦として行われたF1オーストラリアGPだが、開催されるアルバート・パーク・サーキットは抜きどころがほとんどないサーキットとして知られている。
今年は少しでも追い抜きのチャンスを増やそうと、空気抵抗低減システムであるDRSを使用できるゾーンを1か所増やして全部で3か所にしたものの、それでもやはり追い抜きのシーンはほとんど見られなかった。
■ドライバーからも不評のアルバート・パーク・サーキット
このレースをポールポジションからスタートしたもののピット戦略でセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)に前に出られてしまったルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)はレース後に次のように語った。
「素晴らしいサーキットだけど、DRSを余計につかえるようになったとしてもオーバーテイク(追い抜き)はすごく難しいよ」
このレースを6位で終えたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、もし自分がテレビでこのレースを見ていたならば途中でチャンネルを変えていただろうとまで語っている。
■F1カーそのものを見直すしかないとロス・ブラウン
現在F1のモータースポーツ担当マネジングディレクターを務めているロス・ブラウンは、この問題を解決するためにはF1カーを大きく変えることが必要だと考えており、2021年以降に新たなF1技術レギュレーションが導入されるまでは今後も同じような状況が続くだろうと次のように語った。
「この問題に対してもっと構造的な取り組みができるまではあまり進展を見ることはできないだろう」
■アルバート・パークではレイアウト変更の可能性も
そうなると、例えば来年にもオーバーテイクをもっと増やそうとするならば、残された対策はサーキットのレイアウト変更しかないと言えそうだ。
だが、アルバート・パーク・サーキットはその名の通りメルボルンにある公園の周回道路を用いたものであり、そう簡単にレイアウトを変更することは困難だと考えられている。
しかし、オーストラリアGPの主催団体の責任者を務めるアンドリュー・ウェスタコットは地元オーストラリアの『Speedcafe.com』に次のように語り、レイアウトに手を加える可能性もあることを示唆している。
「我々は常に柔軟な姿勢を持ってFIA(国際自動車連盟)およびF1と仕事をしている。もし何か提言があれば、我々はそれについて話し合いを行い、再検証を行うことになるだろう」
■ほかのサーキットにもDRSゾーン追加の可能性
F1では2017年に技術レギュレーションを大幅に変更しており、それによってF1マシンがそれまでよりも大きなダウンフォースを得られるようになっている。このためラップタイムは格段に短縮されているものの、その一方でオーバーテイクは以前よりも難しくなってきている。
このためアルバート・パーク・サーキットでは今年DRSゾーンが3か所に設けられたが、今後ほかのサーキットにおいても同じ取り組みが行われることになりそうだ。
FIAのF1競技委員長であるチャーリー・ホワイティングはこの件について次のように語っている。
「我々としてはもう少し面白いものにしたいと考えている。それ(DRSゾーン追加)はそのためにやったことだし、バーレーンや、恐らくはバクーやカナダでも何らかの手を打つことになるだろう」
■追い抜き増加は困難だろうとメルセデスのボス
一方、メルセデスを率いるトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)は、オーバーテイクが少なくなった本当の理由はこれまで以上に各チームのF1マシンの戦闘力がきっ抗してきているためだと考えている。
ヴォルフはイタリアの『Autosprint(オートスプリント)』誌に次のように語った。
「グループ全体がより接近してきていると思っている。だからかつて見られたように集団をかき分けてクルマが走るような光景はもう見られなくなるだろうね。もう昔とは違うんだ」
今年は昨年よりもチーム間のギャップが埋められてきたと考えられている。もし今後もシーズンを通じて各チームのF1マシンのパフォーマンスにそれほどの差がない状態が続けば、今年は昨年にも増してコース上での追い抜きシーンを見られるチャンスが減ることになってしまうかもしれない。