ルノーPU(パワーユニット)を搭載するチームはドライバー1人当たり年間4基のPUを投入する計画で2018年シーズンに臨むことになるかもしれないと報じられている。
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■昨年よりも厳しくなる年間PU使用数制限
全20戦で行われた2017年はドライバー1人当たり年間4基までのPU使用が認められていた。しかし、全21戦が開催される2018年はルールによってその数が3基に減らされることになっている。
特に、昨シーズンに信頼性問題を抱えていたルノーやホンダにとってはこの年間3基までというルールは事実上かなり厳しいものになるだろうと予想する声もあった。
■ルノーは年間4PU投入を計画か
そうした中、このほどドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』が報じたところによれば、ルノーは自分たちのPUを使うチームに対し、年間4基を投入する前提で計画を組むよう助言を行うことになるかもしれないという。
もしそうなった場合、ルノーPUを使用するチームは恐らくシーズン後半のどこかの時点で規定数を超えるPU投入によるグリッド降格ペナルティーを受けることを予定しておかなくてはならなくなるわけだ。
■PUは信頼性とパフォーマンス開発のバランスが重要に
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、ルノーF1プロジェクトを率いるシリル・アビテブール(マネジングディレクター)が次のように語ったと伝えている。
「エンジン(PU)の寿命を長くしなくてはならないことで、開発速度が低下することになる」
つまり、21レースを3基のPUで乗り切るためには1基のPUで少なくとも7レースを乗り切る必要が出てくる。だが、もし最初から4基を投入する計画で進めれば、それが5レースもしくは6レースで済むことになり、その分PUメーカーとしてはパフォーマンス開発を進めることができるわけだ。
「信頼性とパワーを高めるための開発のバランスを見極めることは非常に困難なんだ」とアビテブールは付け加えている。
■レッドブルは年間4PU戦略に前向き
今季ルノーPUを使用するチームは、ルノーのワークスチーム、レッドブル、そしてマクラーレンの3チームだ。このうちレッドブルは年間4基を投入するという計画を前向きにとらえているようだ。
「仮に戦略的にペナルティー受ける計画で行けば、それほど多くを失うことにはならずに済むだろう」
レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー/ドライバー育成責任者)はそう述べると、2017年のF1第13戦イタリアGPでダニエル・リカルドが規定外PU交換により25グリッド降格ペナルティーを受けて16番グリッドからスタートしたときのことに言及しながら次のように付け加えた。
「昨年のモンツァでは後方からスタートして4位でフィニッシュしたよ」
レッドブルの最高技術責任者を務めるエイドリアン・ニューイも同意見だ。
「レーサーならば4基のエンジンで行こうと計画するだろう。なぜなら、その方が損失よりも利益が大きくなるからだ」と天才F1カーデザイナーと称されるニューイは語っている。
■4PU戦略は検討する価値ありとマクラーレン
一方、今年からホンダに替えてルノーPUを搭載するマクラーレンはもう少し慎重な見方をしているようだ。
「我々は自分たちにとってベストなことをするつもりだ」
そう語ったマクラーレンのエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)は次のように付け加えた。
「まず、自分たちがどういう位置にいるのかを見て、それから決断することになるだろう。だが、3基で行くのか4基にするかという問題は間違いなく議論すべきだね」
■メルセデスとフェラーリはペナルティー回避優先か
だが、過去4年連続でF1タイトルを独り占めしてきたメルセデスAMGはあえて最初から4基のPU投入を予定するといったアプローチをとることはなさそうだ。
昨年、事実上規定数エンジン投入によるグリッド降格ペナルティーを受けることなく1年を乗り切ってみせたメルセデスだが、そのPU開発責任者であるアンディ・コーウェルは次のように語った。
「ペナルティーを受ければそのレースを失うことになるし、そのためにタイトル争いにおいて不利になる可能性があるからね」
そういう意味ではメルセデスにとって最大のライバルとなるだろうと考えられているフェラーリのスタンスもメルセデスとあまり変わらないだろう。両者の戦いがきっ抗すればするほど、規定数以上のPU投入による大きなグリッド降格は致命的な痛手となる可能性があるからだ。
■ホンダの戦略にも要注目
今年のシーズン前公式テストでは昨年までとは打って変わって高い信頼性を示しているホンダだが、今季のパートナーであるトロロッソのコンストラクターズランキング向上という目標に向けてどういうPU開発戦略をとってくるのか、それも今年の見どころのひとつになりそうだ。