メルセデスのモータースポーツ責任者であるトト・ヴォルフが、バーニー・エクレストンがF1最高権威の座にあったころの方が物事がうまく運んでいたと語った。
昨年、F1の最大株主となったアメリカのリバティ・メディアは、それまで長年F1最高責任者を務めていたエクレストンから実権をうばい、チェイス・キャリーをその後任に据えた。
リバティ・メディアはその後かつてメルセデスAMGのチーム代表を務めていたロス・ブラウンをF1モータースポーツ責任者に、さらに元ESPN重役のショーン・ブラッチーズをマーケティング責任者に据えるなど、F1管理運営体制を刷新している。
■新F1管理組織の実行力に疑問符
ヴォルフは、2017年シーズンはF1とリバティ・メディアの「ハネムーン期間」のようなものだったが、すでにフェラーリを筆頭にF1チームたちと新オーナーとの間には溝が生まれ始めていると指摘している。
ヴォルフは、エクレストン時代にも論争となることが多かったものの、エクレストンは常にうまくそれらに対応し、F1に利益をもたらしていたとドイツの『DPA通信』に次のように語った。
「言ってみれば、バーニーがこのスポーツを発明したようなものだし、彼には売り上げを増やすことができるという素晴らしい資質が備わっていた」
「重要なことは、彼は自分がかかわった取引を完了させる力を持っていたということだよ」
そう語ったヴォルフは、新オーナーのリバティ・メディアがもたらしたF1新運営体制は、さまざまなアイデアこそ口にしているものの、本当にそれを実現できるのかどうかがこれから試されることになるだろうと次のように続けた。
「興味深いことをたくさん耳にしているよ。だが、本当に大変なのはいいアイデアを出すことよりも、それを本当に実現させることなんだ」
■F1分裂の危機を生んだ2021年エンジン問題
リバティ・メディアには今後多くの課題が待ちうけているが、その中でも最大のものが2021年以降のF1エンジンルールをどうするかという問題だろう。
昨年リバティ・メディアが提示した案はすでに現行メーカーたちからの反対に直面している。特にフェラーリなどはもしその案が修正されなければF1から撤退し、自分たちでF1に変わる新たなレースシリーズを立ち上げるつもりだとまで主張している。
かつてフェラーリやマクラーレンで活躍した元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、こうした件に関してドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「現時点ではF1で多くのことが違う方向へ進もうとしているところだ」
「メルセデスとフェラーリが一方を占め、ロス・ブラウン(F1モータースポーツ責任者)とアメリカ人たちがその逆の側にいる。そしてFIA(F1統括団体の国際自動車連盟)がその中間にいる状況だよ」
ヴォルフは、今のF1には本当の意味で全体を統括できる者がいない状態だと次のように付け加えた。
「古きよき時代には、バーニー・エクレストンとマックス・モズレー(前FIA会長)が団結していたからチームが影響力を持つことは困難だったんだ。ところが、今は大きな政治的分裂の危機にあるというわけさ」