あるジャーナリストが、ロバート・クビサではなくセルゲイ・シロトキンと契約を結んだと報じられているウィリアムズの判断を擁護するコメントを行った。
昨年末には、2011年シーズン開幕前に出走したラリーレースで大けがを負ったポーランド人ドライバーのクビサがウィリアムズのシートを獲得して2018年に8年ぶりに奇跡とも言えるF1復帰を果たすことになりそうだとうわさされていた。
だが、その後ウィリアムズはクビサとの契約を見送り、ロシア出身のシロトキンと契約することを決断したと伝えられている。
F1ファンや関係者の中にはクビサのF1復帰を期待する者も多く、大富豪の父親が支払う金によってシートを得たと言われているランス・ストロールに加え、やはり潤沢なロシアのスポンサーマネーを持つシロトキンを選択したウィリアムズに対しては批判的な声すらある。
■シロトキンを選択した理由はテストでのパフォーマンス
だが、イギリス人F1ジャーナリストであるアンドリュー・ベンソンは、クビサの母国ポーランドの『Sportowe Fakty(スポルトヴェ・ファクト)』に次のように語った。
「チーム(ウィリアムズ)は私に、シロトキンと契約する第一の理由はサーキットでの結果だったと教えてくれたよ」
「つまり、(2017年シーズン終了後の)アブダビでのテストが重要な意味を持っていたということだ」
アブダビで行われたF1公式テストで行われた予選を想定した走行では常にシロトキンがクビサを上回るパフォーマンスを示していたと付け加えたベンソンは、次のように続けた。
「それに加え、私はロバートがチーム首脳陣たちに対し、ピレリが供給した新しいタイヤに対応するのが難しいと語ったという情報も得ている」
「ウィリアムズは、自分たちの状況ではリスクをとる余裕はないと判断したんだ」
■持ち込み資金は重要な判断材料ではなかった
これまでの報道によれば、ウィリアムズが最終的にシロトキンを選んだのは、その持ち込み資金の差によるものだったとも言われている。うわさでは、ロシア大統領とも関係の深いSMP銀行をスポンサーに持つシロトキンは2千万ドル(約23億円)もの資金持ち込みをウィリアムズに確約したという。
だが、ベンソンはウィリアムズがシロトキンを選んだのはそれが最大の理由ではなかったと次のように続けた。
「ロバートはおよそ800万ユーロ(約10億円)の持ち込みが可能だったが、シロトキンは少なくともその倍を工面できた」
「だが、実際のところ、金は単にドライバー側からのボーナスに過ぎないんだ。もしクビサがシロトキンの倍ほどの力を示していたら、今シーズンは彼がクルマに乗っていただろう」
「すでにルノーがウィリアムズとまったく同じ理由でロバートと組むのを止めたという事実を誰も覚えていないようだね」
「厳しい言い方に聞こえるだろうが、それが事実なんだ」
■情でドライバーは決められない
暗にクビサがF1復帰を果たす可能性は今後もないだろうと示唆したベンソンだが、実際のところそれは残念なことだとも語っている。
「ロバートがグリッドに戻ってくることを期待しなかったF1関係者などほとんどいないだろう。彼はこのスポーツの歴史において非常に嘱望されていた人物のひとりだからね」
「(クビサがF1復帰を果たせば)ウィリアムズにとっては非常にいい宣伝になっただろうし、新たなF1ファンがたくさん増えただろう。FIA(国際自動車連盟)も、その利益に目をつけて彼を採用するよう要請していたほどだよ」
「ウィリアムズにとっても簡単な決断ではなかったのは確かだ。今では彼らは世界中から批判されているし、ストロールとシロトキンのコンビはこれまでのウィリアムズのドライバーラインアップにおいて最悪のものだと言う者すらいる。そうした意見が正しいかどうかは、時がたてば分かるだろう」
そう語ったベンソンは次のように付け加えた。
「だが、決断を下すとき、F1では情が入り込む余地などないんだ」