F1モータースポーツ責任者のロス・ブラウンが、2021年以降のF1エンジン計画に関し、フェラーリの圧力に屈するつもりはないと語った。
かつてフェラーリの技術責任者を務め、2009年にはブラウンGPのオーナー兼代表としてジェンソン・バトンを擁してF1タイトルを獲得し、2010年から2013年までメルセデスAMGのチーム代表を務めていたブラウン。
2014年以降F1の世界とは距離を置いていたが、2017年にF1新オーナーとなったリバティ・メディアの指名を受けてF1モータースポーツ担当マネジングディレクターを務めている。
■新F1エンジン案への反応には驚いた
そのブラウンは、10月末に2021年以降に導入するF1エンジンルール案を示したところ、フェラーリやメルセデスが強硬に反対する姿勢を示し、聞き入れられない場合には2020年を最後にF1から撤退することも辞さないとしていることについてドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のように語った。
「そうした反応にはかなり驚いたよ」
「私は何度か会議に出席していたし、方向性は明確だと考えていた。どういうエンジンにすべきか、そしてそれを基準として新たなルールを作るのだという新しい目標を掲げ、全員一致でそれに合意していたんだからね」
■現行ルール据え置きという選択肢はない
ブラウンはさらに、今後再検討を行うことを拒否するつもりはないが、現行F1エンジンルールを一切変えないという選択肢はないと次のように主張した。
「これは、メインコースよりも前菜の方が好まれるレストランのようなものだし、それとは逆のケースもあるだろう」
「だからこそ、また今新たな話し合いが行われているんだ。もしメーカーがもっとよい解決策を提示できるのであれば、我々もそれに耳を傾けるつもりだ」
「だが、現行パワーユニットをそのまま使うという選択肢はないよ」
ブラウンはその理由として、F1ファンのうち60~70%がもっと大きな音を発生する見応えのあるエンジンを望んでいることや、現行ルールのままであれば新たなメーカーがF1に参戦することはないだろうと考えられていることをあげている。
■フェラーリを失いたくはないがパートナーシップには限界もある
さらに、もし自分たちの意見が入れられなければF1から撤退するとフェラーリが脅しをかけていることについてどう思うかと質問されたブラウンは次のように答えた。
「それは答えるまでもない質問だね」
「もちろん我々はフェラーリを失いたくはない。フェラーリもF1によって利益を得てきたし、F1もフェラーリによって利益を得てきた。だが、どんなパートナーシップにだって限界はあるよ」
「だから、問題はフェラーリが何を受け入れることができるか、そして我々が何を受け入れることができるかだ」
「我々としては全員がF1にとどまることができる解決策を見いだしたいと思っている。そして何よりも、象徴的なチームを失うようなことにはしたくない」
そう語った63歳のブラウンは、次のように付け加えた。
「彼らはF1において重要な存在だ。だから我々としても彼らを尊重し、耳を傾けなくてはならない」