FIA会長のジャン・トッドが、2017年F1第8戦アゼルバイジャンGPでのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が犯した行為に対して厳しい処分を科さなかった理由を説明した。
■アゼルバイジャンでは重い処分を免れていたベッテル
シーズン前半には最大のライバルであるルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)と互角以上の戦いを見せていたベッテルだったが、アゼルバイジャンGP決勝でセーフティカーが導入された際に前を走行していたハミルトンがわざとブレーキをかけて自分の走行を妨害したと受け止めて激怒してしまった。
ベッテルはその直後にハミルトンの横に並ぶと、自分のクルマをハミルトンのクルマにわざとぶつけるという行為に出てしまった。
これによりレース中にペナルティーを受けたベッテルだったが、あまりにも非紳士的行為だったとしてその後統括団体であるFIAによる聴聞を受ける事態となっていた。
結局ベッテルが反省を示したことで、うわさされた出場停止処分などが下されることはなかった。だが、F1関係者の中にはもっと厳しい処分を下して当然だったと考えている者も少なくないと言われている。
■ドライバーの感情面にも配慮が必要だとトッド
その件について質問を受けたトッドは、ドイツの『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のように答えた。
「ご承知の通り、私はかなり寛大なんだ」
「私はコックピットの中でどういう感情を抱くかを考慮しないで、単に行為だけを見て判断しようとする人たちのことはあまり好きではないね」
「私はそういうことに非常に詳しいんだ。ミハエル・シューマッハとやっているときにこういう状況を経験してきているからね」
「1997年のヘレスで、あるいは2006年のモナコでの予選で彼がばかげたことをやったときに、いったい何が起きていたのか想像できるかね?」
そう語ったトッドは、次のように続けた。
「みんな弱さを持っているものなんだ。そして彼らがそれを認め、あんなことをするべきではなかったと言ったときには、我々はもうそのことは忘れるべきだよ。セバスチャンの場合もそういうことだったんだ」
ちなみに、7度F1チャンピオンとなったシューマッハだが、フェラーリに在籍していた1997年にヘレスで行われた第17戦ヨーロッパGP決勝ではタイトル争いをしていたジャック・ビルヌーブに故意に自分のクルマをぶつけたとしてその年のポイントをはく奪されている。
さらに2006年のモナコGP予選では自分の後方でタイムアタックを開始していたフェルナンド・アロンソ(当時ルノー)を妨害するためにラスカスと呼ばれるターン17でわざとミスをしてその場に立ち往生するという行為に出てしまい、その後予選結果をはく奪されて決勝では最後尾スタートとなっていた。