フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネが、今後のF1運営の在り方次第ではF1からの撤退もあり得ると示唆したと報じられている。
これは、10月31日(火)にF1オーナーであるリバティ・メディアが発表した2021年以降の新F1エンジンルール案に対するけん制であることは間違いないだろう。
最近、フェラーリのチーム代表を務めるマウリツィオ・アリバベーネが、提案された2021年以降のF1エンジンルール案に対してフェラーリが特権的に有している「拒否権」を行使する可能性を示唆するコメントを行っていた。
だが、フェラーリがけん制しているのはこの件だけではなさそうだ。
数日後にはリバティ・メディアが2019年からの導入を目指している予算制限の詳細についても発表されることになっている。
■リバティ・メディアが導入を目指す「予算制限」とは?
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、2019年は「トライアル」として、年間1億ユーロから2億ユーロ(約130億円から260億円)の予算上限値が設定されることになるだろうとしている。
この金額にはドライバーやチーム首脳陣に対する報酬、マーケティング費用などは含まれないと考えられており、トライアル期間である2019年には仮にこの上限値を超えてもペナルティーは科されないことになるようだ。
各チームの支出費用を確認するために、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は利害関係を持たない会計士をそれぞれのチームに派遣することになると考えられている。
この予算制限は、すべてのチームが同じ予算でチームを運営することで、資金力を持つ自動車メーカー系チームとプライベートチームが同じ土俵で勝負をすることを可能とすることを目指すものだ。そうなれば、本当の意味での技術力、アイデア力の差での勝負となり、ファンにとってもどのチームが勝つのか分からないワクワクするようなF1となることが期待できることになる。
■撤退という「切り札」をちらつかせるフェラーリ会長
だが、フェラーリ会長のマルキオンネはこうした動きに対し、リバティ・メディアやFIAが「ブランドを維持し、そのユニークな地位を強化するために有益な環境」を創り上げない限り、フェラーリは「参加しない」という選択をするだろうと警鐘を鳴らしている。
F1有数の名門チームであるフェラーリが撤退するということになれば、これはリバティ・メディアやFIAにとって非常に大きな痛手となることは明らかだ。
もしF1を撤退することになれば、その後フェラーリはどうするつもりなのかと質問されたマルキオンネは、F1に代わる新たなシリーズの立ち上げに協力できるだろうし、「いつまでもそれを祝い続けることになるだろう」と語っている。
仮に長年にわたったF1との関係を終わらせたフェラーリ会長として名が残ることになるとしたらどんな気持ちになると思うかと尋ねられたマルキオンネは、「最高だろうね」と答えたと伝えられている。
だが、マルキオンネも決してF1を軽視しているわけではなく、F1は「フェラーリが生まれた日以来、我々のDNAの一部だった」と語っている。もしフェラーリを失えばF1にとっては大きなマイナスとなるのは確かだが、同時にF1に参戦しなくなればそれがフェラーリのイメージにどういう影響を及ぼすかも大きな課題として残るのは間違いないだろう。